内容説明
薫自身は熱心に御仏の名前に訴えかけつづけた。しかし「…」祈りをあげるごとに総角が縮んで、次第に衰えてゆくのが薫にはわかった(「総角」)。妹の小芹を匂に、自分は総角と―薫の目論見はその姉娘の死によって壊れる。身代わりの人形のように浮舟が現れる。かくて奇矯な個性たちはドラマを加速させる。ウェイリーが愛した宇治十帖の世界のリアルが物語の棹尾を飾る。全4巻完結。
著者等紹介
ウェイリー,アーサー[ウェイリー,アーサー][Waley,Arthur]
1889‐1966。イギリスの東洋学者。ケンブリッジ大学古典学科を卒業後、大英博物館に勤めつつ独学で日本語・中国語をマスターし、『百七十の中国の詩』を手はじめに、漢詩や日本古典文学の翻訳を手がける。原詩のリズムを写した漢詩英訳は英詩の新しい詩法を編み出すことにつながり、『源氏物語』の訳はスコット=モンクリーフのプルーストの訳とともに20世紀のイギリス散文に大きな影響を与えたといわれる
佐復秀樹[サマタヒデキ]
1952年、渋川市生まれ。翻訳家。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。専攻、イギリス演劇(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shou
1
ウェイリーは浮舟の物語を非常に高く評価していて、現代文学の心理描写のように丁寧に訳している。原文の雅な雰囲気に流されない分、人物の内面がクリア。感情の吐露としての歌が重要視されていないところが惜しい。2014/01/26
ispanoman
0
最後の数十項があっというまに読み進みストーンと打ち切り、でも余韻がやてくる。分かり合えることは稀なこと、也。2013/01/31
marinefrancaise
0
浮舟がかわいそうで、読みながらないてしまいました。役者の補訳がなされているので分かりやすいです。
guralis
0
ウェイリー版『源氏物語』やっと読み終える。「見る」「見られる」ということはいかに致命的で、また幸福な体験なのかを思う。そして全編をおおう夜の世界と四季折々の自然。それが得体の知れない人の情念や死、運命といったものと重なり合う気がした。現代語でも読了を挫折しかかったにもかかわらず、やはり原文で読みたい。2018/11/25
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