内容説明
エリザベス時代の演劇への親切な入門から始め、「ロメオとジュリエツト」「真夏の夜の夢」「フォルスタフ」「十二夜」「ハムレツト」「オセロ」「リヤ王」「マクベス」「アントニイとクレオパトラ」「嵐」の世界へ読者を誘う不朽の名著『シェイクスピア』と、著者がこよなく愛したシェイクスピアの十四行詩を訳出した書『シェイクスピア詩集』を初めてカップリング。
目次
シェイクスピア（エリザベス時代の演劇；「ロメオとジュリエツト」；「真夏の夜の夢」；フォルスタフ；「十二夜」；十四行詩 ほか）
シェイクスピア詩集（シェイクスピアの十四行詩に就て；十四行詩抄；飜訳論）
著者等紹介
吉田健一［ヨシダケンイチ］
１９１２年東京生まれ。７７年８月３日歿。英文学者、批評家、エッセイスト、小説家。吉田茂の長男。ケンブリッジ大学を中退するまでの海外生活が、その女学的活動の背景にある。ヨーロッパ文学の素養・造詣は深く、特にヴァレリーやラフォルグなどのフランス文学、シェイクスピアをはじめとする英文学への深い愛に基づく、研究・評論や翻訳が多い。また、独自の小説世界を創造した（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
6
想像力とは親密感を与えるものを際限なく探してくる働きで、登場人物も作者と読者の想像力の仕業（２５３頁）。想像力は他者への配慮（思いやり）に直結するからこそ重要なのである。翻訳は一種の批評であるという（３８３頁）。森鷗外の「ファウスト」や「即興詩人」の邦訳を事例にし、彼の知識は正確であったという。2013/03/18
fonfon
5
シェイクスピア原典からは久しく遠ざかっているが、吉田健一のこの本は10代の終わりから幾度読み返したことか。もちろんいつも通読するわけでなく、時折ひらいた部分を少し読む、すると、自分の心の偏りに気づき、傾いていたものをまっすぐに直されて気分がよくなる。ソネットの訳はどれも素晴らしいが、巻末の翻訳論は特に秀逸。翻訳とは一種の批評である、からはじまって、翻訳が原文の傑作を超える場合、を、鴎外の即興詩人を例にあげて話が進むのがスリリングで楽しい。「我々は言葉をつかって、なにを人に伝えようとしているのか」2011/03/31
ヴェルナーの日記
2
シェークスピアの戯曲はほとんど読んではいるが、ソネット集だけは読んでいなかった。 なぜなら、詩の場合、韻律や脚頭・脚尾の音律。さらには原文における発音のアクセントや、語呂合わせといったものは、原文ではなければ、味わうことができないからだ。 そんな中で見つけたのが本作で、ソネットに対し翻訳文と原文を併記(対訳)となっている。翻訳と原文を見比べながら読むことができるのがありがたい。 ただ、シェークスピアの時代の英語は現代英語ではないので、原文はとても読みにくいのには参った。2012/12/15
サイトー
1
シェイクスピア作品の解説と詩集の2つをまとめた本。解説については未読の作もありましたが、文章の美しさについてやシェイクスピア論を読むのもおもしろいものだと思いました。詩集の方は完全に初見で、詩についてはまったくわからないのですが、英語も同時乗っていて韻や英語詩としての音について確認できるのが良かった。ソネット130番と147番がお気に入りです。ネットで他の訳詩も見てみましたが吉田さんの訳が一番よかったかなと思いました。2014/08/04
bittersweet symphony
0
米国大統領のほうは今月ふさわしい本が岩波文庫から出るのでひとまずおいておいて、こちらは甥っ子が某国総理大臣(妹の息子が麻生太郎)になった吉田健一によるシェイクスピアの作品論とソネット(十四行詩)の翻訳抜粋。作品論はまずソネットについての話があって、これは主にはシェイクスピアの三つ巴愛人関係(男－男、男－女、女－男)がいかに読み取れるかに力点あり。続いて各戯曲の評論がありますがプロットや表現に関しては目新しい部分は少ない印象です。それゆえ作品の非凡さが逆に強調されています。2008/11/08
