内容説明
「満鉄」発足から百年。傀儡国家“満州”の文化面の支配を担った「満州映画協会」は、長く謎の存在であった。その満映の理事長として君臨した甘粕正彦と多彩な“活動屋”に焦点を当て、歴史の謎に鋭く挑んだ唯一の書。広汎な史料と貴重な聞き書きで満映の全貌を浮き彫りにする。
目次
第1章 “母”の国への旅立ち
第2章 満映事始
第3章 甘粕正彦の満映理事長着任
第4章 右翼、左翼、活動屋の華麗な饗宴
第5章 甘粕正彦の自殺、崩れ落ちた楼閣
第6章 東北電影―革命と苦闘の中で
年表・フィルモグラフィー
著者等紹介
山口猛[ヤマグチタケシ]
1949年、宮城県生まれ。東北大学工学部金属学科中退。劇団状況劇場を経て、映画を中心に著述活動を展開。東京藝術大学講師。2004年9月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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塩崎ツトム
4
甘粕正彦が理事長を務めた満洲映画協会の興亡を追う。その群像劇は新撰組とかの集団の栄枯盛衰のような甘美さがあるけれど、満洲国をそんな風に消費するには、人的犠牲が大きすぎた。2016/04/03
富士さん
1
日本商業アニメ研究には必須の基礎文献のひとつだと思います。再読。本書のテーマに沿っても、満映の創設から後日談まで、代名詞とも言える甘粕正彦についてや当時の政治、社会情勢や制度までも含めて丹念に、しかも魅力的に描かれた超名著です。しかし、個人的な興味としては、後に東映動画に関わる、赤川孝一、山梨稔、高橋勇のような超重要人物の略歴や満映での活動がしっかり描かれており、興奮しました。特に社長経験者たちの経歴や、戦後満映OBたちがどのような流れで東映に入ったかの体系立った記述は得難く、垂涎の情報です。2015/11/19