内容説明
ジェンダーは、女を歴史の周縁から中心へと転位させる批判的概念であった。しかし、その限界が見え始めたいま、あらためてジェンダーと歴史を再考する増補新版。
目次
第1部 フェミニズム歴史学に向けて(女性史について;ジェンダー―歴史分析の有効なカテゴリーとして)
第2部 ジェンダーと階級(言語・ジェンダー・労働者階級の歴史;『イングランド労働者階級の形成』のなかの女たち)
第3部 歴史のなかのジェンダー(男にとっての労働、女にとっての労働―一八四八年のパリ衣料産業における労働と家族をめぐる政治;統計は労働をどう描いたか―『パリ産業統計一八四七‐四八年』 ほか)
第4部 平等と差異(シアーズ裁判;アメリカの女性歴史家たち―一八八四‐一九八四年 ほか)
著者等紹介
スコット,ジョーン・W.[スコット,ジョーンW.][Scott,Joan Wallach]
1941年、ニューヨークのブルックリンに生まれる。現在、プリンストン高等教育研究所社会科学教授。専門は女性史。著書に、『カルモーのガラス工』(H.B.アダムス賞受賞)などがある
荻野美穂[オギノミホ]
1945年生まれ。現在、大阪大学大学院文学研究科助教授。専門は女性史
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感想・レビュー
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ヒナコ
3
ジェンダーとは性について語る知であるというフェミニズムの構築主義の論理の実践を歴史分析、歴史学分析分野で試みた歴史書であり、フェミニズムの理論書。 女性にあてがわれた差異を女性史として実証的に認識することによって、女性史家の意図とは逆に、女性の不平等の根拠になってしまうという論理は目から鱗が落ちることうけあい。女性史を実態的女性の歴史とみるのではなくて、女性が排除、構築された過程と書き直し、歴史的に排除された結果としての女性を根拠にするのではなく、排除そのものを批判する脱構築的作業が必要とスコットは説く。2017/02/06
の
2
学校で教えられる知の体系に女性がほとんど出てこないことに疑義を付した作者による「ジェンダー学」書。教育における知の枠組みは男性の視点で構築されており、「客観的」とされた歴史学も、実際は「男性の主観的」であると著者は主張する。そのため「ジェンダー」の概念を「性別を文化的に構築されたもの」ととらえ、公的な権力関係の男女区分を見直す提案をする。出版から20年経った現代でも男女平等を謳ってはいても、伝統的な男女の区分は色濃く残っている。しかし、その一方でフェミニズムに基づいた新たな社会秩序も生まれている。2011/01/31
ほなみ
1
面白かったけど難しかったな。 やっぱり社会学は抽象的な議論が多いし、時代も国も違う事例が多いのでなかなか理解が難しい。 この本を通して感じたのは差異を示さなければ差別は認知されないが、差異を示した途端にある集団が普通ではないことを表してしまうという点。 これは非常に難しいし、おそらくこれまで多くの人がぶつかってきたのだろうなと感じた。 2024/03/29
陽香
1
199205152017/05/24
吉田 直道
1
ジェンダーという言葉は、男女の性差は生物学による固定的なものではなく、社会的・文化的に付与されたもので可変的であるという意味があると著者は説明している。この考え方によると、女性は意図せず疎外されてきたことになるというのが、この本の基本的な考え方である。私はこのような視点で男女差を考えたことが無かったので刺激的ではあったが、この本は増補新番でさえ10年前に出版されたもので、現在ではどのような議論になっているのかが分からないので、他の本でも追っていこうと思う。2014/10/18