平凡社ライブラリー<br> 小さなものの諸形態―精神史覚え書 (増補)

平凡社ライブラリー
小さなものの諸形態―精神史覚え書 (増補)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 258p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784582764963
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0310

内容説明

「消滅へ向かいつつある存在とは、「今日の人間」全体ではないか。人類とは潜在的少数派ではないのか。」バルトークからシモーヌ・ヴェイユまで、いくつかの断片に即して二十世紀という時代の経験を読み解き、思想態度のかたちを問う、十四篇の「考える言葉」。今日なお救い出すべきものを探りあてる批評的実践。

目次

文化崩壊の経験―晩年のバルトークについての脚註
小さなものの諸形態―精神史の再測定のための覚え書
経験の「古典」化のための覚え書
「残像」文化
在日三世のカフカ
落下する世界
友情の点呼に答える声
家族という場所
貧民の都市
夢の弁証法
考える言葉
記憶の縁の文字
反歴史―「思考しえぬものの思考」の試み
叙事詩的精神についての脚註

著者等紹介

市村弘正[イチムラヒロマサ]
思想史研究者。1945年生まれ。大学および大学院で思想史と社会哲学を学ぶ。思想文化の諸領域を横断しながら、社会と精神の変質の解読に専念している。現在、法政大学法学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

zirou1984

3
このエッセイ集に収められた「友情の点呼に答える声」を20代始めに読んだことがあるのだが、ただただ衝撃の一言だった。市村弘正の思考は、奪い去られたもの、踏み躙られたもの、小さなものに対して一貫して向けられている。それは甘っちょろいヒューマニズムや博愛的なものとは無縁の、自らが「踏み躙った側、踏み躙るのを許した側」であることを自覚しその痛切な反省と批判から来るものだ。二十世紀と言う時代が上げた声無き悲鳴に耳を傾け、その痛みを救い上げたような言葉がここにある。本当に勇気付けられる、個人的に本当に大切な一冊。2012/04/29

ЯeoN_Hoff

3
この世界に生きる市村弘正がなぜ発狂しないのか、読んでいて不思議になる2010/02/15

編集兼発行人

1
物事の微細な襞を丁寧に説き起こした論考。バルトークが世界を弔う態度。忘却と苦悩による「国民」形成。インサイダーとアウトサイダーとの速やか且つ絶え間ない往還。残像と廃墟。帝国主義下における支配層と被支配層との友情を成立させる「感情の幅を広げる経験」の苛烈さ。役割の過剰な強制と解放の願望とで無力化する家族。インターディペンデンスによる解放。複雑性に耐え切れず過労する言葉達。等々興味深い示唆に富む中で特に不可能性から可能性を探る「在日三世のカフカ」が出色。記録とは記憶の力を集積させて鎮魂する行為と同義かと理解。2013/03/19

まつゆう

0
脆い「小さなもの」への痛切な愛着と反省が、贅肉や表皮を剥ぎ取って髄のみを残した文章で語られている。久々に骨身に沁みる一冊を読んだ。2013/02/17

MADAKI

0
受苦的な「小さな存在」こそが、とめどなく落下する現代におけるほんのかすかな破れ目であり、そこに着眼した本である。否定性、弱さ、限界性など、ネガティヴなものを克服するのではなく、果てしない苦しみをもってその極限に達しようとする動き。

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