内容説明
万葉の自然はすっかり姿を変えてしまったが、万葉びとの歌心はしっかりと今に息づいている。日本各地にある万葉の地を訪ね歩き、草陰にひそんでいる古代の人の足跡、風のそよぎに感ぜられる万葉びとの詩情を、時代と風土との関わりのなかから説き起こす、「犬養万葉」の集大成。
目次
初瀬・桜井
山の辺の道
飛鳥・藤原京
宇陀
葛城・宇智
吉野
平野南部
奈良
生駒・龍田
著者等紹介
犬養孝[イヌカイタカシ]
1907年、東京生まれ。1932年、東京帝国大学文学部国文科卒業。その後、大阪大学教授(56~70年)、甲南女子大学教授(71~81年)を歴任。87年、長年の万葉集研究の業績から文化功労者に選ばれる。98年、死去
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
95
20代前後の時に萬葉集にはまっていてこの本の前身の本(社会思想社の教養文庫)を何度も読んでいました。犬養先生が亡くなられた後に編集者が若干手を入れて(写真は古いままですが)再度出版されたものです。主に地名に関係ある万葉集の歌をその写真とともに解説してくれています。この巻は大和ということで多くの歌が収められていて訪ねたくなる場所がかなりあります。2025/05/02
Shoji
42
奈良県内にある万葉の故地を尋ねては、万葉歌に切り取られた風景を解説したり、飛鳥・奈良時代の万葉人の生活の様子を考証しています。普段の奈良、「ハレとケ」の「ケ」の奈良が書かれています。また、いくつか紹介されている万葉の故地の風景写真が昭和30年代のものであり、ノスタルジーにあふれています。万葉ファン、飛鳥・奈良時代の歴史ファンにはお勧めの一冊です。2019/10/31
はちめ
11
奈良は縁のある土地ではあるが、住んだことがないので、地図を眺めながら1ページづつ読み進めた。また、ページをめくるごとに写真が掲載されていて、これが昭和30年代の写真なので、近代の影響をあまり受けていないので、万葉の時代に思いを馳せるのに極めて役に立った。もしかしたらではなくおそらく、飛鳥辺りの風景は万葉の時代の方がきらびやかだったかもしれない。それにしても思うのが、万葉集に地名の入った歌が多いこと。現代短歌にはない傾向なので、万葉集理解において重要な切り口になり得る傾向だと思う。☆☆☆☆☆2020/06/06
はちめ
7
2年ぶりの再読。昭和30年代に書かれたもので、写真も当時の写真が豊富に掲載されている。お世辞にも上手とは言い難い写真だが、逆にそのことが万葉の時代を彷彿とさせる効果がある。万葉の時代から本書が書かれた時代までは千年を超える時が経過しているが、その千年間よりも大きな変化を直近の60年はこの土地にもたらしていると思う。 数年前に明日香の地を散策したり、暗峠を歩いて越えた経験は極めて貴重な体験となっている。吉野には行くことができてないのが無念だ。明日香から芋峠を越えて吉野に行くことができるだろうか。☆☆☆☆☆2022/07/06