内容説明
檜、欅、松、栃、杉、桜…木を愛し、木工の類を毎日そばに置いて使っていたという著者による「木の話」二十選。日本の木の伝統と、人の木に対する関わりについて感覚と体験、そして取材を通じて深められた思考が、やがて独自の日本文化論へと結晶する。
目次
檜―木曽神宮備林/伊勢神宮
欅―東村山梅岩寺/黒田辰秋の櫃
松―善養寺(東京)/梅若能楽堂
栃―北アルプス鹿島槍ケ岳/槇野文平の椅子
杉―三輪神社/つくり酒屋の杉玉
樟―奈良春日神社/法輪寺の観音像
槇―大蔵寺(奈良)/「たる源」の湯槽
樫―和歌山県田辺/びんちょうの炭
楊―水元公園(東京)/「江南」の楊筥
桐―福島県柳津/「江南」の桐箱〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
27
檜、樫、朴など二十種の木について、性質に始まり、歴史、工芸、美術などとの関係を語る。知識が豊か過ぎて少し冗舌に感じたが、美しいものへの感性は瑞々しい。失われつつある技術や伝承への哀惜はあるものの、著者らしい潔さのお陰でうるさくはない。建材や道具の類から紙、織物、仏像に至るまで、日本人は木に頼って生きてきた。だから木の性質に応じた利用法を発達させ、木ごとの細やかなイメージを形作ってきた。それらは今、緩やかに滅びつつある。新たな生き方を模索する中で、木との新たな関係を考える必要があるだろう。2017/03/04
田氏
15
幸田文のほうの『木』は読んだので、今度は白洲正子である。自然科学的な関心の強さが見られた前者に対し、こちらは文化研究寄りの感。ところでイスノキの漢字は「柞」「檮」であるのだけれど、どのIMEでもことごとく、「いす」「いすのき」では柞への変換がかなわない。しかし本書にて柞の字にハハソの読みがあることを知り、試しに入力してみると、Microsoft IMEでは一発で柞が出てくる。これで今後は、柞の字を打ちたいときに、Google日本語入力で柞刈湯葉にお出ましいただいて三文字削るという手順を取る必要がなくなる。2024/09/19
井上裕紀男
12
昔から好きな木、でも私は白洲氏のようには感じとることが出来ておらず、嬉しいような悔しいような。 水元公園の楊並木、善養寺の松、たる源の槙、旧細川邸の桂並木、いずれも素晴らしいです。個人的に好きな青蓮院の樟が出て参りまして感無量、他にも木にまつわる逸話が出てきます。 箱を大事にしてきた日本で、明治に名物の箱が数多く外国に流出していたと知り、残念至極。櫛や櫃にのれん、職人が見合う随一の木を使って仕上げる様を、白洲氏が見事に書き上げています。本書を参考に、木々や作品を見に行きたい。朴の話は、地味な私にぴったり2021/01/16
belle
6
久しぶりの白洲正子。木偏のつく「木」のお話。名前から始まり、形を愛で、人の匠の技に行きつく。年の初めに新鮮な空気を吸っているような読書。公園の椿の蕾はそろそろ開くだろうか。2018/01/08
SAKU
2
かの白洲次郎の妻である著者による日本の代表的な木を語るエッセイ?その木その木に対する思いを語る文章からは、著者の木に対する愛情が感じられる。都会で忙しく生きていると木のことなど考える余裕もないが、ふと、一息入れて読んでみて、思いを馳せることもいいのかもしれない。2019/11/02