内容説明
仏教に関する不思議な話。善い報い、悪い報いを受けた話…。人間の欲を描いて、善行を勧め、極楽往生を目的にまとめられた奈良時代の説話集大成。
目次
雷を捕えた話
狐を妻として子を生ませた話
雷の好意で授けてもらった強力の子の話
聖徳太子が不思議なありさまを示された話
仏法を尊信して現世の報いを得た話
観音菩薩にすがって現世に報いを得た話
亀を買って助け放し、現世で報いを得て亀に助けられた話
聾者が大乗経典に帰依して、現世に報いを得、両耳が聞こえた話
幼児が鷲にさらわれ、他国で父に会えた話
子供の物を盗んで用い、牛となって使われ、不思議なことが現われた話〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SIGERU
48
日本最古の説話集に、物語の原型を見た。薬師寺の僧侶、景戒により平安初期に編纂された本書の企図は、あくまでも仏の教えを江湖に知らしめる、民衆への訓導教化にあったのだろう。事実、シンプルな因果応報譚が過半を占めている。蛇と結婚する異類婚姻譚などは、あるいは中国の神仙小説の影響もあろう。だが、出自のはっきりしない挿話に、むしろ、はっとさせられることが多かった。例えば、寺に安置された美しい吉祥天如の像に愛欲する宗教家の男。滑稽を狙った挿話だが、涜神の恍惚という現代的なテーマすらも窺えて、興味深い。2022/06/30
金吾
32
勧善懲悪な仏教説話集です。仏教を信じ、心穏やかにすごせば幸せになっていくという話です。雷様、怪力女、鷲にさらわれた娘、大蛇と女とか現実味はないながらも仏教パワー全開の面白い話が多いです。2022/01/16
テツ
28
平安時代に創られた仏教説話集。善には良きことが、悪には悪しきことが報いとして降りかかる。勿論現実の世界ではそんなことはないとみんな知っているし、善悪の判断基準なんて不確かで頼りないと解っちゃいるんだけれど、こうして報いという考えを薄ぼんやりとでも感じられた時代&世界って、もしかしたら安心出来るのかもなと思う。超越者に全てを委ねて、彼が裁いてくれるって恐ろしくもあるけれどきっと安心するんだよ。2019/02/03
Gotoran
26
本書は、平安初期に薬師寺僧景戒が著した正式名称「日本国現報善悪霊異記」という日本最古の(主として奈良時代を背景とした)仏教説話集。勧善懲悪、因果応報、輪廻転生、極楽往生。閻魔王、優婆塞等々。奇跡。怪異。人間の欲望や感情、それらへの執着。狐や牛、亀、烏などの動物が、はたまた雷、鬼が、人間のように話し、考え、行動する、摩訶不思議な話がいっぱい。面白可笑しく、興味深々。巻末の訳者(原田敏明・高橋貢 両氏)の解説も実に興味深かった。2013/06/17
KAZOO
15
仏教に関する説話集です。奈良時代の本ですが、現代語訳にしてくれているので非常に読みやすく感じました。通読すると結構面白く、当時の道徳教科書のような感じだったのでしょうね。夢枕さんの世界に通ずる感じがしました。2014/05/10