内容説明
寝床で腹這いになって地図を広げ、山や湖、海辺へと、地形や風景の面白さに誘われて途中下車を繰り返す、不思議な道連れとの二人旅。日記と手紙で綴られた、1962年5月―北海道の旅。
目次
雨の中の出発と、上野駅のホーム。
急行列車の窓辺からの手紙。田園生活への憧れ。信号灯と十一日の月。
夜の連絡船が桟橋を離れる。
函館の海に五月の太陽がのぼる。
洞爺湖畔のレストランで、ここまでの車窓からの春浅い風景を綴る。
四十三山から有珠岳に登る。夕靄の山頂で少年に出会ったこと。
『昭和新山生成日記』のこと。雨の海辺。
苫小牧の街を歩き、支笏湖へ来る。湖を船で丸駒温泉へ渡る。
支笏湖畔の朝の散歩。〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
43
汽車とバスを使った北海道一周旅行記。名所・景勝地を巡るのではなく、足の赴くままに旅をする。それは「旅人」と呼ぶにふさわしい。たまたま出会った名も知れぬような漁村や農村の暮らしが、絶妙の距離感で描写される。調査する客観的な眼でも、住み込んでどっぷりつかった惑溺の眼でもない、通りすがりの立場を自覚した「旅人」の眼が好ましい。しかし串田さんの眼が特別なのは、その眼が同時に「山」に向けられることだ。登山家ではあるが、そう山に登るわけではない。汽車の窓から、漁村を歩きながら常に山を見ている。山に導かれる旅なのだ。 2015/09/17
あじ
34
1962年の北海道。桜前線真っ只中の5月を、足の向くまま気の向くままに旅をする。煮出した紅茶を“コーヒー”として出す時代である。列車を“気動車”と呼び分けているのでさえ新鮮だ。野鳥や野草の名称が豊富に飛び交い、団体旅行客の賑やかな描写が微笑ましい(筆者は苦手だったようだ)。一人旅を死守してきた筆者が、途中どういう風の吹きまわしか年齢不詳の旅人朝倉くんを迎える。そんな二人の別れ際が実に気持ちいい、忘れがたき袖ふりであった。2019/09/23
じじょ
1
ああーおもしろかった。北海道を旅するとはそういうもの。 目的地もなく、汽車に乗り、その日に宿を決める。山に登り、漁村を歩き、スケッチをし、手紙を書く。自然のままに。旅の終わりもいい感じだ。さらりと。朝倉君が気になる。2018/04/10
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