内容説明
オリエントに暮らす諸民族の、長寿と幸福への願いから生まれたアラビア医学。歴代の名医や、あっと驚く治療法のエピソードをちりばめながら、中世イスラム社会の営みと、豊饒な文化を描きだす。
目次
アラビア医学のはじまり
予言者の医術
魔法から医術へ
カリフと名医
暗い時代の医術の爛熟
アラビア風の精神療法
アラビアの薬の香り
毒と解毒
衣服と思想
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
12
「古代ギリシャ・ローマの伝統を引き継いで云々」のような小難しい思想史のようなものを想定していたが、実際は名医の紹介を中心としたエピソード集といった趣き。サクサク読めて、物語集として楽しい。まぁあくまで「逸話」「お話」なのだが、医師は王や権力者の生死を手中にできる立場だけに、妬みや嫉み、暗殺など実に生々しい話題が多い。またイラン系やギリシャ系、キリスト教徒などが活躍する、国際色豊かな盛期イスラム世界の雰囲気も伝わるところ。シルクロードを介して、日本にも伝わっている薬の知識もあって驚きである。2024/11/08
Ted
6
元版は'65年。十字軍の頃は、西欧(フランク)の医療水準は医学と呼ぶのもおこがましいほど低く、アラビアの方が進んでいたのでその詳細について知りたかったのだが、馴染みの無い人名と細切れのエピソードが多く期待が外れた。ただ、漢方薬の中にもルーツを辿るとアラビアの薬草学まで遡るものもあり、我々とも全く無縁な存在ではない点は面白いと感じた。衰退した原因の1つに、支那と同じく肌を露出しない文化的制約があると思う。これでは施せる医療にも限界が生じるため、やがて西洋医学に凌駕されていったのは必然だったと言えよう。2011/08/16
たから
2
当時進んでいたといわれるアラビアの医術を知ることが出来る本。薬物に関する情報がもう少し欲しかったなあという所。良書。2010/01/16
Като́н
0
トトやイムホテプがエジプトにおける医学の神。 アポロンの子供がアスクレピオス、その子孫はアスクレーピアダイと称され、ギリシア医界を代表した。ヒポクラテスもその十七世の末裔と言われる。 イスラーム世界には預言者の医術という言葉もあるように、ムハンマドはかなり医学知識があった。ハディースにも実際に用いた治療法として生薬療法・吸角法・ルクヤが記録されている。2024/07/31