内容説明
「銃口か十字架の下か」―破滅的デカダンからカトリックに転じた作家が描破するシャルトル大聖堂の美と神秘。キリスト教象徴学総覧にして聖なるものの博物誌とも称しうる異色作の名訳が、さらなる推敲を経て甦った。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chacha子
14
大樹林になぞらえた協会堂の描写から始まる、シャルトル大聖堂に対する詩的形容は建造物に宿る魂さえ明瞭に写しきっている。確かにこれを純粋な小説と言い切ることはできないが、音楽的な調子はむしろ詩そのもののようで、読んでいて心地良い。抄訳なのが残念。2015/08/05
ラウリスタ~
14
文庫化されたのは初読。あとがきが数ページ増えてるのかな。久々に読んだら、なんと面白いこと。大伽藍の美術的描写を中心とした抄訳だから、訳としての価値は大幅に下がるとはいえ、その分ユイスマンスの美術批評家としての側面がよく表れている。出版の事情を考えたら、しょうがなかったのだろう。そのうちちゃんとした訳を作らないとな。ところで、シャルトル大聖堂に行ったら、この本が土産物みたいにして売ってるのかな?気になる。2014/04/30
くみ
9
憧れのシャルトル大聖堂。関連図書を見つけると読んでみたくなります。この本もそのひとつ。なのでユイスマンスがどういう作家さんなのかも知らずに読み始めました。最初は崇高な宗教文学なのかなと思ってましたが、割とユーモアもあり入りやすかったです。主人公デュルタルのシャルトル大聖堂への愛が深くて、深すぎてちょっとこじらせ気味。それでも大聖堂に火をつけるとかいう間違った方向への愛ではなく、好きすぎて語りすぎてしまう純オタク的な愛で可愛らしい。大聖堂を歩きながらの解説シーンも多く、益々いつか行きたいと思いました。2022/06/25
qoop
5
神秘主義的カトリシズムへの志向を、教会建築の理想像を通して披瀝するという構成。シンプルながら含蓄深い内容だが、抄訳なのか。衒学的な思考が答えの出ない苦悩を深め、それによって跳躍へと至る…のかな。肝心の部分が訳者の説明のみとは何と乱暴な!というのが正直な感想だが、これはこれで綺麗に読めてしまう。むしろ「さかしま」「彼方」とテンションの上では釣り合っているような気もするし。まぁそれだと著者の変遷を辿れないということになってしまうのだろうけれど。2016/12/05
堆朱椿
3
一応小説なのだけど、オタク全開のシャルトル大聖堂オンリー本だと思う。オタク目線がとても楽しい。資料が無いので大聖堂は想像するしかなかった、残念。フラ・アンジェリコについては絵の写真を眺めながら読んだ(異様に楽しかった)。9章も好き。省略されてしまっている章(!)も読みたい、読みたいぞ。完訳本を出して欲しい。お願いします。2015/07/16