内容説明
『白樺』同人にして、日本民芸運動の創始者・柳宗悦―日常雑器の美を捉え、日韓併合策に対し断固たる批判を貫いた穏やかな思想家。生涯を辿り、その思想の質と射程を浮び上がらせる、伝記と批評の見事な融合。
目次
第1章 伝統との接点
第2章 個のめざめ
第3章 友人の眼・家族の眼
第4章 健康という規準
第5章 日常の神秘
第6章 白樺派の文体
第7章 朝鮮にひかれる心
第8章 蒐集とは何か
第9章 雑誌『工芸』
第10章 神と仏
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっちも
14
柳の身辺に起こった事を淡々と語る前半。その一つ一つのエピソードが後から起こる物語にロジックとして完全に繋がっている。著者の柳への傾倒が並々ならぬものを感じるし読み物として見事。中盤以降は著者自身がノリにノッて柳の感動エピソードをこれでもかと盛り込んでいるから柳を知るに本当に良い本。以下抜粋。柳は芸術の世界で独創を狙う事のおとし穴に気づき、模倣の価値を説いた。このあたりで、ヨーロッパ文明の価値観への批判が現れる。「霰釜」と呼ばれる茶釜の写真をとりだし、その説明文として次のように書いた。2023/02/25
Takashi Kubo
1
柳宗悦の南無阿弥陀仏を読んだあとだけに、不眠症に苦しむ柳宗悦が「念仏なんかきくものか」と言った(長男宗理「おやじ 柳宗悦」)という下りは意外というか、面白かった。柳宗悦についてよく分かる一冊。2013/11/11
TANA
0
鶴見俊輔による伝記があったとは知らなかった。前半は、柳の父・悦多、兄弟、妻・兼子、白樺の同人など、周囲の人々の逸話から柳宗悦の人となりを描写する。後半でようやく柳宗悦本人の活動や文章を読解するが、鶴見は民芸運動ではなく、柳の朝鮮への関わり方や、国家や戦争への態度、信仰に焦点をあてる。柳宗悦の伝記としてはいささか奇妙なバランスで描かれた本書だが、それによって鶴見が思う知識人の理想的なあり方の一つが示されているように思う。2024/06/01
yokkoishotaro
0
柳宗悦のイメージが思っていたのと違って驚いた。ブレイクの詩集を買ってしまった。2023/09/30
ささらほうさら
0
切り口、情報の取捨選択に著者らしさが光る。柳の妻、兼子夫人の存在が良い。2021/01/31