内容説明
ミソサザイの神、クマの神、カワウソ神や、ほかさまざまの神々が、知恵と勇気が報われる話、強情とひとりよがりが懲らされる話、天と地のはじまりの物語を謡う、アイヌの歴史と文化の結晶。
目次
ミソサザイの神が語った話
鼻長ネズミが語った話
強情クマ神が語った話
小さいカワウソが語った話
ウサギのおじいさんが語った話
怪鳥フリューが語った話
マリリンコ姫物語
カッコー鳥の歌
ことばあそび
強情カワウソが語った話
アイヌ・ラッ・クル伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちえ
45
アイヌの世界観はこんなに豊か。生き物や樹木全てが神、神同士もアイヌとの関係もとても生き生きして魅力的。アイヌの子供にとって、いろりを囲んで歌われるユーカラを聞くのはさぞかし楽しかっただろう。天地創造の物語「アイヌ・ラッ・クル伝」は大活劇。作者は聞くユーカラを見るユーカラにしようと「アイヌ・ラッ・クル伝」を劇に仕立て1976年にパリのユネスコ本部で公演。〈ところ狭しとアイヌ・ラッ・クルは活動し〉ギメ美術館で〈力強く、炎となって世界の文化人達に体当たりし〉たそう。想像するだけでワクワク。見てみたいなぁ。2020/04/15
テツ
26
アイヌに伝わる民話。むかしばなし。自然は人間と対立する存在ではなく乗り越える存在でもない。我々はその懐に抱かれながら瞬くような短い時間だけこの世界に存在をゆるされている。森羅万象全てを。我を、我々を包み込む世界全体を畏れ敬い糧とするメンタリティ。語り継がれた物語を読むだけではそうした思想の奥底まで到達することなんて不可能なんだろうな。自然の一部から生命のサイクルから抜け出し、カムイも精霊も消え去り人間だけになってしまった世界は寂しいな。2018/02/09
てん
21
世界三大叙事詩にも含まれているユーカラ。その中でも、神々や英雄が一人称で語る形式のものをカムイ・ユーカラというらしい。読むと、子供向け絵本のような話もあれば、そうでないものもある。アイヌは文字を持たないから記録は口頭伝承になる。 追記:全く違う国なのに似たような物語があることがあるが、マリリンコ姫の物語は竹取物語に少し似ている。また、英雄が天に向かって放つ矢に、死者の霊が乗って天上へ行くというのも印象的。2021/06/18
いくら丼
14
面白くてすぐ読めた。アイヌが天に矢を射かけて、霊の道を作り天へと返すとは、環状列石の本で触れられていたが……なるほどこの本では二度、実際にそのシーンがあった。なんか嬉しいと同時に、やはり触れると印象に残るなあと思う。荒ぶる大シカとの格闘では、雄ジカの角は突進力があって怖いが、掴んで横に倒すと簡単に倒れるのだと、さり気なくシカ狩りのポイントが語られていて、こうして後世に技術を伝承するのだなと思うとともに、やはり実際の狩りではゲーム的思考の限界があるのであって、こういった話や技術には触れていきたいと納得した。2023/11/15
おはなし会 芽ぶっく
12
5か月ぶりの例会。【テーマ アイヌの本の持ち寄り】旭川の某高校の郷土部(アイヌ文化)が毎年発刊する「上川アイヌ研究」の紹介もありました(我が子が通う高校なんです)。全員がマスク着用・消毒・密にならないように心がけての例会でしたがとても盛り上がりました。感染予防に注意を払い、毎月行いたいです。2020/06/23