出版社内容情報
ヨーロッパのオリエントに対するものの見方・考え方に連綿と受け継がれてきた思考様式――その構造と機能を分析するとともに、厳しく批判した問題提起の書。解説=杉田英明
目次
第3章 今日のオリエンタリズム(潜在的オリエンタリズムと顕在的オリエンタリズム;様式、専門知識、ヴィジョン―オリエンタリズムの世俗性;現代英仏オリエンタリズムの最盛期;最新の局面)
オリエンタリズム再考
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
48
著者の念頭にあるオリエントは中東、イスラムのことですが、今や米中対立の時代においては、我々が想起するオリエントもその範疇に参入させて考えた方が良いでしょう。メルセデス・ベンツの広告が物議を醸したように中国に対する記述は多く、知的に信頼を置けぬ対象を操作するというのが本書の学びでした。問題は我々の意識がどちらにあるのか。中国の覇権主義や人権抑圧は問題ですが、そのことで中国を過剰に記述する側に回っていないか、我々は近代の理念をオクシデントと共有しつつ、オリエンタリズムには与しないバランス感覚が問われています。2022/01/13
逆丸カツハ
42
やっぱちょっと偏りすぎではないかと薄々思っていたがそういう批判もあるのだな。とりあえず安直なイメージを持つのはダメということは頭に入れなければ。2024/09/14
燃えつきた棒
41
もちろん、サイードが言っていることはもっともだし、自分の内なる偏見に気づかされるというのは、確かにある。 だが、上下巻900ページを使ってこれだけというのは、やはり長すぎるという感じがする。 巻末の杉田英明「『オリエンタリズム』と私たち」に、鋭い指摘があった。/ 【オリエンタリズムを考える上で見逃すことのできない、別の重要な論点にも触れておく必要があるかと思われる。それは、いわゆる「ユダヤ人問題」に代表される、「内在化された東洋」の問題である。 サイードは、→2023/11/12
A.T
31
19世紀から現代に続く西洋のオリエンタリズムに反逆する渾身の下巻。多勢に無勢ゆえ、ぶっ放すタマは散弾銃のような乱れ打ちになってしまう。古くはナポレオンから始まりフランス文学のシャトーブリアン、フロベール、現代はアメリカの歴史学者バーナード・ルイスなどなど(余りの多勢にて列挙しきれない)イスラム圏の人々に代わってイスラムを位置付けてきた全てに対してサイードはノン!と言う。 これは1970年代の著作だが、この21世紀に拡大しすぎた問題の発火点を教えてくれる。2021/09/18
白義
20
三章ではいかに洗練された学者たちすらもオリエンタリズムのくびきを免れていないか、現代の中東研究者に粗野なオリエンタリストが多いかが次々明かされる。結局のところ、他者の文化を表象する時、オリエンタリズムは常に我々の内側にあるものなのかもしれない。それは日本から見た中国韓国などのアジア、はたまた評論家から見たオタクや若者もまたそうか。他者について語ること自体幻想領域に規定されまたそれを形作るならば、度重なる陣地戦で異を唱え続けていくしかないのだろう。訳者解説や補論もよかった。現代の古典2012/10/18