出版社内容情報
一心理学者の強制収容所体験の記録『夜と霧』は、日本でなぜ読み継がれ、大震災後さらに読まれているのか。生きる意味を訴えるフランクルの思想の深奥を追ったノンフィクション。
内容説明
一心理学者の強制収容所体験の記録『夜と霧』は、日本でどのように読み継がれてきたのか。フランクルの数々の著作が大震災後さらに広く読まれ、私たちの心に強く語りかけてくるのは何故か。「それでも人生にイエスと言う」―生きる意味を訴える思想の深奥を追う渾身のノンフィクション。
目次
序章 生きる意味
第1章 『夜と霧』を抱きしめて
第2章 フランクルの灯―読み継ぐ人たち
第3章 強制収容所でほんとうに体験したこと
第4章 ヴィクトールとエリー
第5章 本がよみがえるとき
終章 あたかも二度目を生きるように
著者等紹介
河原理子[カワハラミチコ]
1961年東京都生まれ。東京大学文学部社会心理学科卒業。朝日新聞社会部記者として、性暴力被害の取材をきっかけに、さまざまな事件・事故の被害者の話を聴く。AERA副編集長、文化部次長などを務め、現在、朝日新聞編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
60
新聞記者によるルポだが、記者としての徹底した取材の一方で自らの思いが託されていて読ませる。特に戦後、独自のセラピーを提唱し臨床でも大活躍したフランクルが、故郷ウィーンで批判されていたことの真実を探る旅が貴重だと思う。ナチを赦したとの批判だ。『夜と霧』のナチにもまともな人間がいた、という記述だ。フランクルはその後も何度も強調したという。理論的には、ナチであったから全て悪とするのは、ユダヤだからとラベルを貼るというナチの発想と同じになるから否定される、となる。しかし著者は、それだけではない、と言う。2015/10/12
けんとまん1007
40
フランクルの「夜と霧」「それでも人生にイエスと言う」は、読んでから、随分と時間が経っている。そんな今、この本を手にすることで、改めて読んでみたくなった。1冊の本が書かれ、そして、この国で出版され、自分の目に留まる。たやすいことではない。それだけも十分なのだが、その背景を知ることで、ますます原書の深みが増すように思う。人間というものを、改めて考えてみるには、最適な1冊。人は何のために存在するのか。ここに立ち返ることが大切だ。2019/03/24
Nobuko Hashimoto
29
何かを知りたくて追っていく過程を書いた本が好きです。対象への強い関心や好奇心、ワクワクするような発見や行き詰まり、人との出会いと新たな関係性の構築といったプロセスも書き込んだ本には専門書以上に刺激や示唆を与えられることが多いです。本書もそのような本です。著者はフランクルの『夜と霧』に深い感銘を受け、同じく彼の著作に大きな影響を受けた人々を日本各地に訪ねます。さらにはフランクルの辿った道を確かめにポーランドやウィーンを訪ねます。そうした「旅」を経て河原氏自身の生きる意味についての思いが記されます。 2016/05/18
Cinejazz
16
ドイツ強制収容所に送られ、両親、兄、妻、すべてを失って、地獄から故郷に戻った神経科医フランクルが綴った『一心理学者の強制収容所体験』(邦訳『夜と霧』)は、ナチス告発、復讐、報復のあらゆる衝動を乗り越え、極限の悪を克服した果てに〝それでも人生にイエスと言える〟心境、苦悩を受け入れ、引き受けて生きていく人間精神の高揚を謳いあげました。本書は朝日新聞編集委員である著者が、生きることの意味を語り続けた思想家フランクルの『夜と霧』の精神世界を探求した、こころ揺さぶり震えさせてやまないフィクションの秀作です。2020/07/31
薦渕雅春
15
ヴィクトール・フランクル『夜と霧』の背景とか 周辺のことが語られている 。『夜と霧』はおそらく 、一度読んで「感動した!」とか 、ましてや「おもしろかった」と言うたぐいの本ではないのだと思う 、と 。『夜と霧』は 、書かれていることが難解で理解できない 、というものではない 。書いてあることはシンプルだ 。ただ 、フランクルは往々にして 、世の中の逆を言う 。読み手が 、できあいの思考の枠組みを捨てて 、虚心坦懐に見るいさぎよさが必要かもしれない 、と 。『それでも人生にイエスと言う』も紹介されてた 。2017/02/18