出版社内容情報
知と文芸を横断する好評シリーズ、第4期刊行開始! 写真家・探検家としてだけでなく当代随一の文筆家としても知られた著者の、自然、動物、そして人への畏敬あふれる名篇集。
内容説明
心のフィルムにだけ残しておけばいい風景が時にはある―自然と人間の原点を求めて旅した写真家が紡いだ物語。
目次
クジラの民
木の実の頃
ポトラッチ
カリブーを追って
カリブーフェンス
新しい旅
雪、たくさんの言葉
白夜
ケニス・ヌコンの思い出
シシュマレフ村
家を建て、薪を集めるトーテムポールを捜して
ワタリガラスの家系の男
一万本の煙の谷
約束の川
水の惑星
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
@nk
59
とある風景を目にした星野道夫は、写真家でありながらシャッターを切らず、これは心のフィルムにだけ残せばいいのだと悟る。その氷上の風景と彼の佇む姿を私たちが思い浮かべられるのは、カメラだけでなくペンをも携えた星野道夫の、圧倒的な感性と筆力によるものだろう。彼はまた、ひとつの景色を見て感じることに誰ひとり同じものはなく、誰かと同じ感覚で景色を見ることはできないという当然も、私たちへ伝えてくれる。/消えようとしている景色や物語を求め、人や動物に出逢う。立ち入れない領域を知り、立ち入れないと思っていた領域を越える。2024/02/06
Tenouji
26
なるほど、星野道夫氏はカリブーの群れを追っていたのか。やはり、対象を見つめる視線、時空間に関する感性が違うな。都市は離散的で真逆な時空を持っている。円環的な感覚を取り戻す必要があるのかな。2021/05/30
pirokichi
23
先月発行された星野道夫さんの随筆集。やっぱり素晴らしい。もう~一篇目の一行目からガツンとやられてしまった。クジラ、カリブー、ムース、ワタリガラス、トーテムポール…星野さんの文章は、アラスカの大自然とそこに生きる人々を、そしてさらにもっともっと広い世界があることを教えてくれる。「地平線へ消えてゆくカリブーの大群を茫然と眺めながら、揺さぶられるような感動とは裏腹の、ひとつの時代を見送っているような哀しさがあった」。星野さんの精神的な深さは、私をあたたかく包み込んでくれる。2021/03/14
lovemys
17
美しい世界だった。自然の一部となって暮らす人々がかつてはいた。そんな地域にも近代化の波は押し寄せる。人間だけが地球の営みから外れた暮らしをしているような気がする。そして地球は、その特別な暮らしをしている人類に侵されている。自然の営みに組み込まれた人々の生活は、穏やかで、緩やかで。そんな人々に見せてくれる自然の姿は、私には想像できないくらいに美しいのだろうな。星野さんの優しい描写と、混じりけのないピュアな視線が心に染みる。星野さんの描写する地球の壮大さは、文字だけでも伝わり息を呑む。いつかこの目で見てみたい2022/08/30
MOTO
12
見慣れたはずの雨や雪、風や空や海とか虹とか…。でも何度も見ても心が遠のく。星野さんの言葉にも感じるそんな果てしなさ。2021/06/21