出版社内容情報
吉本隆明はその著書との出会いを「ひとつの事件」と評した──。人間、動物、植物、はては天体にまで思いを巡らせ、生命科学を「思想」に跳躍させた不世出の解剖学者の精髄。
内容説明
内臓の感受性が鈍くては世界は感知できない―科学と芸術を横断する解剖学者の生命記憶を辿る旅。
目次
人間生命の誕生
民族と里帰りより(「椰子の実」の記憶;絹の道)
母乳の味(母乳と玄米;哺乳動物誌;味覚の根源―「憶」の意味)
胎児の発生より(胎児の顔;受胎一か月の像)
内臓波動より(いのちの波;万物流転―リズムの本質)
「原型」に関する試論―人体解剖学の根底をなすもの
動物的および植物的―人間の形態学的考察
「右」と「左」
呼吸について―仕事と息抜きの関係
内臓の感受性が鈍くては世界は感知できない
著者等紹介
三木成夫[ミキシゲオ]
1925~87。解剖学者。大正14年12月24日、香川県丸亀市で、産婦人科医の三木綱三と於令の四男として誕生。東京大学医学部入学、大学院二年のとき、突如不眠症に陥り、在野の思想家・冨永半次郎に出会う。竹谷桃子と昭和35年11月に結婚。一男一女。東京医科歯科大学医学部解剖学教室で助教授として血管系の比較発生学的研究に取り組んだのち、73年、東京藝術大学に保健管理センターの医師として赴任した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
74
著者のことは「養老孟司入門」を読み興味を持った。東大医学部卒業後、解剖学教室助教授を経て、東京藝術大学保健管理センターの医師として赴任。生命記憶や内臓感覚を語るようになる。この本は、その論集。胎児が辿る生命の進化の記憶を読むと、夢野久作「ドグラ・マグラ」を思い出し興奮する。肺と意識の関連を読むと、今のコロナの怖さを連想した。肺そのものを壊すと同時に、「息抜き」となるべき発声や絶叫を封じていて「息詰まり」を起こしており、なんと怖いウィルスかと。「内臓の感受性が鈍くては世界は感知できない」とは腑に落ちる。2021/04/12
oooともろー
2
理系の書でありながら文学となっている。「最近、子供の幼児化がしきりに叫ばれる。しかし考えてみれば、いつの世の大人たちも陰ではせっせと女たちの乳房を吸っているのだ。」素晴らしい!至言!2020/05/01
才谷
1
胎児が母親のお腹の中で生命の進化を辿ってくると言うような話を聞いたことがあったが、まさか受胎後1ヶ月からのわずか1週間ばかりで魚類から哺乳類へと駆け足で辿ってくるだなんて!2021/01/14
go
0
#三木成夫 #胎児の世界 父は直接教わったことがあるようで、勝手に親近感を覚えている。2022/03/31
健康
0
解剖学者が見た壮大な人間の姿をドラマチックに語る。「唇音は哺乳動物の象徴」というのはハッとした。確かになぁ。2021/05/09