出版社内容情報
生誕150周年の知の巨人の膨大な原稿を1冊に精選。自然科学、民俗学、宗教学等を横断し、古今東西を渉猟できる未知の読書体験
内容説明
燕石を所持する人間は至福の人だということになる―生誕150周年、全身で学問を謳歌した知の巨人、ここにあり。
目次
山婆の髪の毛
桃栗三年
草花伝説
野生食用果実
オニゲナ菌
七種の菜粥
蝙蝠および鳥類の花粉媒介につきて
鹿と緬羊
カシャンボ(河童)のこと
日月中の想像動物
狸の金玉
虎が人に方術を教えたこと
水の神としての田螺
お月様の子守唄
泣き仏
厠で唾はくを忌む
子供の背守と猿
塩に関する迷信
邪視について
針売りのこと
人魚の話
人柱の話
睡眠中に霊魂抜け出づとの迷信
江島記行
燕石考
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
89
私にとって南方熊楠と言えば、博覧強記の変人で、粘菌研究家でもあり、岩田準一氏と共同で男色文化研究に携わっていた日本の文理の垣根を越えた研究家という人物。南方氏の文章はやや、読みにくいですが、好奇心の塊と頭の中に膨大量のインターネットベースを組み込んだような思考が伺え、ワクワクします。特に子守言葉研究、「桃栗3年柿8年」の嘘や七草の定義の不確かさ、「燕石考」、エグすぎる西洋の人柱との比較は愉しい。そして「山姥の陰垢(いびくそ。凄い名前だ・・・)」を砂糖を掛けて食べても大丈夫だったという記述にお茶を噴きました2017/09/15
秋良
22
民俗学の大家、博覧強記の南方先生の著作の中から有名な話を選んだ入門書。以前に神社の合祀反対運動の書簡を読んだ時、元気な人だなあと思っていた。やっぱり元気だった。面白かったのは人柱の話。あまり証拠が出てこないと聞いたことがあるんだけどどうなんだろう?時代が時代だから文献調査と聞き書きがベースで、発掘技術の発達やゲノム解析ができるようになった現代にこの人がいたらもっと楽しかったかもしれないとも思う。海外の東洋学者と喧嘩して勝つ話では岡倉天心の「お前はモンキーかドンキーかヤンキーか」の名言を思い出した。2024/12/05
トムトム
22
熊楠さんのエッセイ?いやはや、物知り!日本の伝承、外国の伝承などを羅列。それらの起源や根拠を探ってみたり、残酷なことや性的なことに触れてみたり、たまにクスリとくるユーモアをまじえてみたり。難しい単語や知らない漢字が出てきて少々読みにくいのですが、それを差っ引いても面白かったです!最後の数行。古代ギリシャの哲学者に、村の老婆が言った。「手で触れられる地上に答えがあるのに、なぜ触れる事も叶わない天上に答えを求めるのか?」。今まで色々考察してあーだこーだ言ったうえで、これ!おしゃれだ。2020/02/01
roughfractus02
12
辞書的な知は、一つの主語にリンクされる属性を述語として列挙し、一つの項目とする。一方著者は、述語を固定して主語を入れ替えたり入れ替えた主語に続く述語を入れ替えてリンクを飛ぶようにしつつ、古今東西の言い伝えをネットワークしていく。『十二支考』の虎の話では残酷、血、赤、赤い花と属性を表す述語が入れ替わり、人魚の話では骨が薬になる、肉が食べられる、姦淫されると述語を入れ替え、さらにエイ、ジュゴン、山椒魚等の主語の入れ替えにシフトする。関東大震災後皇居で発見された人骨に関する「人柱の話」が興味深い(25編収録)。2022/11/25
oooともろー
6
知の巨人。このシリーズは貴重。2017/12/02