出版社内容情報
室町幕府滅亡までの約20年の実態とは。将軍足利義輝期の政治を押さえつつ、信長―義昭の政治史を読み解く。「天下」と地方の関係性を重視、「天下人」の理解への再考も促す。
内容説明
志半ばで誅殺された将軍足利義輝が描いた治世と、その弟にして最後の室町将軍となった義昭と信長の関係性。二十年弱でめまぐるしく変遷した政局をひもとき、天下人の本質に迫る。
目次
はじめに―二条城の二人の将軍
第1章 御所から城へ
第2章 足利義輝と遠国
第3章 理想の幕府を求めて
第4章 城破れて天下布武
終章 天下人へ継承されるもの
著者等紹介
黒嶋敏[クロシマサトル]
1972年東京都生まれ。青山学院大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程中退。博士(歴史学)。専門は日本中世史。現在、東京大学史料編纂所画像史料解析センター准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
68
足利義輝と義昭兄弟の「将軍の権威が地に落ちた現実から目をそらし、実権があるかのように振る舞うダメ男」とのイメージを塗り変える。義輝は都から遠い地方大名とのつながりに、義昭は自らも戦う戦国大名的思考で室町幕府復活を目指したとする。しかし義輝は自分の軍がなかったため三好に討たれ、義昭は戦争にばかり関心を持って肝心の政治を疎かにして信長に咎められる。何より当時の幕府は空洞化して人材がおらず、将軍の理想を実現できる機関ではなくなっていた。どちらも時代の求める将軍像を掴めず失墜する姿は空回りという言葉がふさわしい。2021/04/21
鯖
22
義輝は姻戚である近衛氏や直臣を伝手に、伊達、大友、毛利等東北や中国、九州の遠国大名の抗争において、公平な第三者的立場から和睦や仲介を務めることで、天下静謐を目指したが、弟の義昭は自らが当事者として積極的に抗争に介入したため、仲裁役としての将軍の在り様には不適格だったとの指摘。義輝が目指した都と鄙が密接に結びつき足利将軍を支える秩序としての都鄙の論理は室町幕府の理想像だったんだろうなあ。…その理想が実現されることは初めから終わりまでついぞなかったわけだけども。2021/01/24
ほうすう
17
ちょっと義輝を好意的にとらえすぎではないかと思う。遠国との交流が多かったののも分かるが栄典の乱発は将軍自ら室町秩序を破壊したという結果を出してしまったのではないか。また、遠国との交通というのは義輝期に限ったものなのかも気になる。例えば義稙などは流浪中に九州や東北に書状を送っていたがこれとはまた大きな違いがあるのか。義輝期の二条城が広大で名馬や鉄砲が集積されていたという事実は興味深いがそれは軍事的に活用できたものなのか、義輝がやったことは結局足元の安定には何もつながっていなかったのではと思ってしまった。2021/07/09
MUNEKAZ
14
足利義輝・義昭兄弟のそれぞれの将軍権力を、遠国の大名との通交から描いた一冊。近衛家との婚姻によって得たネットワークも駆使し、中立公平な調停者として自らの権威アップを図る義輝に対し、宿敵・三好打倒のためのコマとして大名たちを直接動かそうとする義昭と、この兄弟の「違い」に着目したところは面白い。また二人が君臨した二条城の変遷を描くことで、戦国最末期の将軍と地方の関係を示しているのも興味深い。全国の大名の献金で出来た義輝の御所と、信長が「軍役」として作った義昭の御所、同じ場所にあってもその在り方の違いは大きい。2020/06/08
アメヲトコ
11
足利幕府13代将軍義輝と15代将軍義昭、そして「天下人」織田信長の3人を軸に、その政治の差異について考察した一冊。「都鄙関係」をキーワードにした権力の指向性の違いの指摘はなるほどと思わされます。京都を追われた後、息子義尋に16代将軍の望みが出るや急に大人しくなる義昭はかわいい。2020/07/12
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