内容説明
中世のざわめきが聞こえる。笑い、涙、怒り…生活の息吹き。街道と家々のあいだで、人びとはどのように生きたか?伝説、年代記、文学作品等を手がかりに、中世人の生活を生き生きと描く。
目次
時間と生涯(時間;家族;女性;青春;クライマックス;転回点;死;思い出)
空間と環境(空間;交通;植民;家;食糧;衣服;自然;技術)
人と共同体(同胞;個人;連合体;身分;法;国民;言語;神の民)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
56
食べる、話す、友情、家族……。生きることと切り離せない「生の形式」。それは自由な愛が認められている時代とそうでない時代とでは家族や結婚の意味や価値が違うように、時代により変化するもの。欧州中世のその「生の形式」を様々な資料を紐解きながら探り、中世という時代を浮き上がらせようという本。上巻では家族や家、食糧や衣服などの生を規定する環境を見ていきます。予測できない政情や、天候の影響を受けやすい素朴な農業、共同体間の緊張など、人々は今よりもずっと先の見通せない不安の中に暮していたということを痛感しながら下巻へ。2019/04/02
印度 洋一郎
5
中世ヨーロッパの社会を、当時の人々の残した書簡を元に色々な角度から探る大著。時間や人生の概念、空間(生活の場や移動に関する考え方)、人間関係(身分や国民意識)など今よりも大雑把であり、同時に別の意味で複雑でもある中世の世界を垣間見る。言語についての文献で、「聖書に記されている神や天使が何語で人間と話したのかは決め難い。多分その人間の理解出来る言語だろう」という合理的な発想が見られる。「言葉は生き物のように変わる、時代を隔てれば同じ土地でも通じないし、土地を隔てれば、同じ時に生きていても通じない」も慧眼だ。2013/02/13