内容説明
本書は、ロレンスの絶大な人気の原因を、第1部・第2部で探っていくことにする。まず第1部ではロレンスの人生の概略を、現在までに明らかになっている事実のみをもとに語っていく。第2部では1924年から1987年のあいだにロレンス神話がどう発展してきたのかを、書物を中心に(舞台や映画、テレビの描写をも含めながら)考察していく。
目次
第1部 T.E.ロレンス―仮面の裏の素顔
第2部 ロレンスを探して(スーパーヒーロー;オールディントンの時代;“混乱の時代のプリンス”?;映像のなかのロレンス)
第3部 今日のロレンス像(孝古学者―実績の再評価;諜報エージェント―謎の軌跡;ゲリラ指導者―先駆的な理論;外交官―ある挫折;機械技術者―意外な一面;作家―パラドックスとユーモア)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kochi
14
よくまとまったロレンスの略歴に続き、ロレンス生誕100年当時までの伝記などを比較して論ずる。初期の英雄として持ち上げる風潮から、アンチヒーローと捉える見方が主流となり、そして現代いたり、バランスの取れたものとなっているとのこと。そう言えば、映画は彼の異常なところが強調されている気もする。また、多彩な才能を発揮したロレンスについて、作家や戦略家等の観点から分析。驚くべきは機械技術者という見方もあり、一兵卒として空軍にいたときは、ボートの設計などに従事していたらしい。また、訳者の方の熱量にも感服。2021/06/15
彩也
2
英雄か、ペテン師か。帝国主義者か、アラブを優先させた売国奴か。「アラビアのロレンス」こと、T.E.ロレンスは絶大な人気の「カリスマティックで謎めいた人物」であり数多くの伝記が出版され続けているが、「あるときは偶像として崇められ」、「またあるときはその秘密を暴露され、おとしめられてきた」。その理由を「(各伝記)作家たちがおかれていた時代環境が、ロレンスの描写に相当の影響を与えていた」とし、主な伝記を分析、批判する。ただ、著者は相当なファンなのか、ロレンスに都合よく解釈しようとしている気がしないでもない。2012/09/15
Gen Kato
0
デヴィッド・リーン監督による名作映画を再見して、実際の人物像にも興味がわきました。感動した作品は映像であれ音楽であれ絵画であれ、活字情報で補完したくなるのが昔からの性分なので(笑) 国の統一と欧米の介入という意味でいろいろ考えさせられる部分もあり、ロレンス自身が興味の尽きない人物であることもあり、読みごたえのある一冊でした。2014/01/09
c
0
映画だと不明瞭な描かれ方だった、所謂「デラア事件」の詳細を知りたくて。本人の告白によれば、鞭打ちの拷問の後男に犯されたということだが、この発言自体後に二転三転している。しかしロレンスにはもともと同性愛の傾向があったし、大戦後は、拷問のときの苦痛を求めるかのように、自ら男の鞭に身を晒すようにすらなったという…。痛みに屈服すると同時に魅了されてしまったという点で、「トーマの心臓」のユリスモールを思い起こすが、エーリクのキャラに「わが青春のマリアンヌ」が参照されていることを考えると、これもたぶん引用なんだろな。2012/03/04