出版社内容情報
本書は夜明け前の「前」の話であり、江戸時代に脈々と息づいていた〈みやび〉の種々相のひと齣。美濃加治田の豪商平井冬音たちによる歌道研鑽のものがたりを追跡する。
内容説明
江戸のタイムカプセル―。これは夜明け前の「前」の話であり、江戸時代に脈々と息づいていた〈みやび〉の種々相のひと齣である。現代における短歌や俳句の学びにも通底する、美濃加治田の豪商平井冬音たちの歌道研鑽の実際を通信添削に窺う。彼らの歌学びの心性もさることながら、点者側の事情(指導に対する情熱とスキル)も実に興味深い。そう、しくみは茶道や花道など他の芸道とおんなじなのだ。江戸は案外近いのである。
目次
一 美濃加治田平井家歴代の文芸愛好 初代信正・第七代吉音・第八代冬音・第九代冬秀・第十代公寿・第十一代貞誠(『俳諧恒之誠』;平井家歴代の事績 ほか)
二 江戸のみやび(江戸の雅俗;和歌史の十七‐十八世紀 ほか)
三 加点詠草一覧(加点詠草とは何か;加点詠草一覧表 ほか)
四 点者たち(七人の師)
五 上方地下の詠歌作法(二種の加点詠草;同じ作品を点者はそれぞれどう添削したか)
著者等紹介
神作研一[カンサクケンイチ]
1965年、東京都生まれ。上智大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。金城学院大学を経て、国文学研究資料館教授・総合研究大学院大学教授(併任)。専攻、日本近世文学、特に和歌史・学芸史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
PETE
3
江戸時代前半の、殿上人から伝授を受けた歌人たちが、生計の足しとして和歌の通信添削を行っていた証拠となる資料が大量に出たことから、その分析を行った論文の一般向け版。濃尾平野北端の村の豪商が京都と通信しながら行っていた出版活動も示されていて、楽しい読書になった。2025/03/26
Go Extreme
1
都への憧れを秘めた人々の学び 雅俗共存の江戸文化 飛脚便を利用した和歌の添削 加点詠草に残る生々しい添削の跡 上方地下→地方・和歌の伝播 複数の師に点を仰ぐ八代冬音 わずか19歳での歌学研鑽の始発 師の点の数を競い合う実作修練 てにをはは心を表現する重要要素 師による歌の欠陥を病に例える指摘 同一和歌に対する異なる点者の添削比較 門流の確保・拡大という組織上の戦略 地方における最新かつ最高の和歌の学び 通信添削→各階層の知的レベル向上 文化史の空白を埋める上方地下の活動 加治田・300年前の地域貢献2025/04/30
-
- 洋書
- Tigers