内容説明
近代以前、脈々と受け継がれてきた入木道(書法、筆法、…文字を書く心得)の数多の口伝、不可思議な秘術。
目次
第1講 入木道―かくも不可解なるもの(田安徳川家と曼殊院の入木道伝授書;「シナの百科事典」と入木道;伝授による文化の継承)
第2講 歴史の中の書く営みについて(書と霊力と、帝王と天皇;『古今和歌集』から『実隆公記』まで;書の日常性)
第3講 入木道の伝授書を読む(生きている文字;入木道が語る書の秘伝;入木道が伝えんとした書の心得;国文学と入木道)
感想・レビュー
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gorgeanalogue
13
三読。中世の貴族たちにとっていかに入木道(書)が重要な営みであり、歌とともに文化的教養の中核であったこと、しかも日常的な行為であったことを残された入木道の秘伝書(ハウツー本みたいなものか)を通して描く。中世における「書くこと」という行為のありようが、平易に説きあかされる、稀有な入門書だと思う。がその一方で再三持ち出すフーコーへの言及はうまくいっていないと思うし、講演録だから仕方がないとはいえ、導入・ざっくりした背景の説明がほとんどないのは惜しく、あったら中世文化論として画期的なものになっていたと思う。2022/06/28