出版社内容情報
神話の偉大さに達した告白文学。今回は人生の危機、自殺未遂事件を起こしたレリスは夢と幻覚の中で記憶の縫合手術を試みる。全4巻
ミシェル・レリス[ミシェル レリス]
著・文・その他
千葉 文夫[チバ フミオ]
翻訳
内容説明
フィブリーユ。還暦を間近にひかえた1957年5月末、自殺未遂事件をひき起こしたレリスは夢と幻覚のなかで記憶の縫合手術を試みる。
著者等紹介
レリス,ミシェル[レリス,ミシェル] [Leiris,Michel]
1901年パリ生。作家・民族学者。レーモン・ルーセルの影響を受け、20歳ころより本格的に詩作を開始。やがてアンドレ・マッソンの知遇を得て、1924年シュルレアリスム運動に参加。1929年アンドレ・ブルトンと対立しグループを脱退、友人のジョルジュ・バタイユ主幹の雑誌『ドキュマン』に協力。マルセル・グリオールの誘いに応じ、1931年ダカール=ジブチ、アフリカ横断調査団に参加、帰国後は民族誌学博物館(のちの人類博物館)に勤務、民族学者としての道を歩む。1937年バタイユ、ロジェ・カイヨワと社会学研究会を創立。戦後、ジャン=ポール・サルトルらと雑誌『タン・モデルヌ』を創刊。1990年没
千葉文夫[チバフミオ]
1949年生。早稲田大学大学院文学研究科博士課程満期退学。パリ第一大学博士課程修了。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
48
中国訪問や自殺未遂、それらと絡み合う夢を巡って展開する本巻は、作者の自殺を挟んでいるからか「なぜ生きるのか」、なぜ書くのかといったことの周りを巡り、個と社会、芸術と政治行動、彼方と此方、二つの極に引き裂かれる煩悶と理想と自省を行方も分からず辿るような読書でした。ただ、読み終えた今は、蔓のように渦を巻き、うねる語りに沿うように辿っていたのは、自殺後レリスの喉に刻印された傷、「生命の樹」だったのではないかと思うのです。そして、懊悩と自省の中から現れたそれがひどく美しく思えたことも言っておきたいように思います。2018/07/23
踊る猫
28
実に歪(いびつ)な印象を与える書物である。恥ずかしながら自分の話をすれば、私も自殺未遂を二度したことがあるので死の臨界点まで行ってそこからタフに生き抜いたミシェル・レリスという作家のふてぶてしさをこの一巻からは確かに感じ取れる。だが、それは幼年期の甘美さを描いていたとも受け取れる前二巻や、あるいはそれこそ『失われた時を求めて』の憧憬のような甘さをこちらにもたらすものではない。筆は晦渋で、なにが書かれているのか分かりにくいまどろっこしい印象を受ける。過渡期に書かれたもの、という印象を受けた。さて、どう完結?2019/10/03