内容説明
鳥と話がしたい。限りない愛を生きようとした清貧の若者の物語。一九九三年ドゥ・マゴ文学賞、カトリック文学大賞を受賞したフランスの読書界注目の話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
99
聖フランチェスコの一生を詩的な言葉で綴った小説。フランチェスコの生き方は喜びに基づいていると思う。生きる喜び、信じる喜び、愛する喜び。フランチェスコが経験した喜びを、この小説に入りこむことで感じることができる。それは本当に幸せな体験だった。フランチェスコの笑い声が聞こえてきそうな音楽的でリズミカルな文体も見事で、この文体自体がフランチェスコの一生を表現していると言えそうだ。最後の章の現代社会への批判は痛烈で、形骸化してしまった宗教への絶望を感じた。2014/08/03
新地学@児童書病発動中
97
聖フランチェスコの生涯を詩的な言葉で描きだした小説。これまで読んだ本の中で、一番美しい気がする。純粋で透明な美しさがあって、読んでいると心の中の汚れが洗い流される。ひたすら純粋に生きたこの聖人を生き方を描く文体が、詩的で普通の散文の枠組みをはみ出して、音楽のように軽やかだ。フランチェスコの生き方には、暗いところが全くない。ひたすら晴れやかで、澄み切っている。とは言っても、普通の人は真似できない厳しさがあって、何もかも捨て去り、権力とは正反対の立場を取る必要がある。喜びがフランチェスコの生き方の(続きます)2017/09/27
ねこ
5
副題に「小説・フランチェスコの生涯」とあるけれど、予想を裏切る内容。著者が詩人と知り、納得。少し引用。「わたしは真実を語る、ゆえに、わたしは狂人ではない、と狂人は言う。いっぽう、わたしは真実を語るが、わたしは真実ではない、と聖者は言う」。一文、一文に、立ち止まってしまう。立ち止まって、あっ、そっかと思う。「宗教は人びとを結びつけるものであり、憎悪以上に宗教的なものはない」。ああ、あああ、わかるような気がする。そんな感じで読み進んだ。わたしには、晦渋でした。2015/06/21
seichan
2
中条省平の訳本リストを見てて、聖フランチェスコの(半ば想像的な)伝記というので読んだ。……ほんとこの人(中条省平)、すばらしく趣味がいい。フランス文学のうつくしさを見せてくれる。感謝してる訳者のひとり。2011/08/25