出版社内容情報
祓除の土偶や天児から、ゴシックドール、さらにはラヴドールやロボットまで、広汎な人形ワールドを認識論的に捉える亜人論。遺作
金森 修[カナモリ オサム]
著・文・その他
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えも
19
認識論の研究者が真面目に論じた総括的な人形論。人形の歴史や系譜、彫刻との差異、四谷シモンらの球体関節人形、乱歩の「人でなしの恋」や川端の「片腕」などといった、凡そ人形に関することは、ほぼ論じられています▼著者は病を知ってこの本を書き始め、この本を書き上げてすぐに亡くなっている▼それだけに真摯な思いが伝わってきました。2019/01/13
らむだ
6
亜人論の延長線上に人形を据え、広大な“人形ワールド”に読者を誘う一冊。フィクションに登場する人形から人形様のものまで様々な“人形”が論じられる。出来るだけ広く、こぼれ落ちるものがないよう練られた構成で参考文献もしっかり示されているので、初学者にも知識を深めたい者にもおすすめ出来る内容になっている。2022/08/03
hakootoko
6
プロローグ、第一章、第七章のみ2020/02/08
owlsoul
5
人形とは文字通り「人の形」を模して作られる。人間が「人の形」に馳せる様々な想いの結晶。それは愛情であり、呪詛であり、エロスであり、生死である。哲学者・金森修が自らの死期を意識しつつ書き上げた遺作。認識論や科学思想史を専門としていた金森が最後に選んだ主題は、人間が「無関心な物質世界」に抗うために繰り広げる「人間化願望」の、原初的でささやかな発現ともいえる「人形」であった。死を想うのではなく、死を感じながら書かれたであろう文章から伝わる気迫、そして達観した視点と優しさ。最後の一行には目頭が熱くなった。2021/09/23
有智 麻耶
3
科学認識論の研究者である著者が、自身の死の間近に完成させた人形論。テン年代に展開してきた〈亜人〉論の延長線上にあるとはいえ、最期の仕事が専門外の人形を主題としたものであることに、何か感動を覚えざるをえない。人形の本質なるものを退け、さまざまな人形のあり方を考察しながら、広大な人形ワールドへと誘ってくれる。人形に関心をもち始めた読者が最初に読む一冊としてよいだろう。2021/08/12