出版社内容情報
「おもいだしたのよ。ずうっとむかしのことをね」
おばあちゃんは、桜の木の下で話しはじめます。
大連というみなと町でくらしていたこと。戦争がおこったこと。そして、日本に帰るときにわかれてしまった大切な家族、犬のクロのこと……。
内容説明
戦争さえなければ、ずっといっしょにいられるはずだった。たいせつな家族だった犬のクロは、あの日、わたしとはなれてしまった。
著者等紹介
あまんきみこ[アマンキミコ]
1931年、旧満州に生まれる。坪田譲治主催の童話雑誌「びわの実学校」の同人となり、1968年『車のいろは空のいろ』で第1回日本児童文学者協会新人賞、第6回野間児童文芸推奨作品賞、2023年には同作の新装版『車のいろは空のいろ ゆめでもいい』(ポプラ社)で第70回産経児童出版文化賞大賞を受賞
鎌田暢子[カマタノブコ]
1952年、島根県に生まれる。奈良女子大学文学部卒業。1987年「りょうちゃんとさとちゃんのおはなし全5巻」で第34回産経児童出版文化賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
51
読友さんの感想を読んで借りてきた、図書館の新着図書。あまんきみこさん、御年90歳を超えられての新刊絵本だ。旧満州からの引き揚げの体験が、絵本のおばあちゃんに重なる。「あとがき」には、書いては直し、また書いては直しを繰り返して、30年以上の歳月をかけて完成した絵本だとある。地球に暮らす全ての子どもが笑顔で輝くことを深く祈るという言葉が、重くしみた。2025/04/19
ゆみのすけ
27
あまんきみこ先生作の絵本。孫娘と桜並木を散策中に出会った黒い毛並みの犬。そこから、戦時中、中国の大連で飼っていた犬のクロを思い出し、悲しい過去が語られる。太平洋戦争が終わり、外地に住んでいた日本人は祖国へ引き上げることに。その際、育てていた小鳥、金魚、猫、犬は連れて帰れなかったそう。その事実が描かれている。大事な家族と引き裂かれた悲しさ。そうするしか術がなかった悔しさ。離れても元気でいてほしいという願い。それらが込められた本作は素敵な絵と相まってよかった。2025/04/06
どぶねずみ
24
NHKラジオ第一『絵本で伝える平和への願い前編』拝聴。満開の桜は、お婆ちゃんが生まれる前からこの景色の移り変わりを知っている。子ども時代のお婆ちゃんも、桜を見て思い出すこともたくさんあるだろう。戦争や国家権力による悲しい思い出も、桜が全てを丸く包み込んでくれる。そんなことを教えてくれているような気がした。著者は今年(2025年)で93歳。今でも戦争についての作品を書き続けている。2025/05/10
anne@灯れ松明の火
21
読友さんご紹介。新着棚で。優しい表紙絵だが、おばあちゃんの子どもの頃の切ない思い出の話だった。戦争中、大連から引き上げる時に置いてきた犬のクロ。預けてきた家から抜け出して、埠頭にやってきたクロは、その後、どうなったのか。ずっとずっと、おばあちゃんの心には棘のように刺さっていたんだろう。おばあちゃんのような思いを、子どもたちが二度としないように、という平和への祈りがこめられた作品だった。絵は鎌田暢子さん。2025/05/16
遠い日
8
夢のように咲く桜の下で、おばあちゃんが思い出す悲しい過去。白昼夢のように胸を去来する、本当にあったこと。戦争の傷はまだ癒えていないのだとわかる。黒い毛並みの犬の姿に、どうしようもなかった別れの理不尽さが被さる。孫娘のクミに語るその事実が重い。戦後80年、思いを新たにしたい。2025/04/16
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- 和書
- 所有しないということ