内容説明
おじいちゃんの家の庭にある立派なネムノキを、おとなたちはきり倒すといいだした。ぼくは反対したけれど、枝がのびすぎて、あぶないからといって、枝をきり落とすことになる。ぼくは、おとなたちにいいたいことをうまくことばにできない…。
著者等紹介
岩瀬成子[イワセジョウコ]
1950年山口県に生まれる。『朝はだんだん見えてくる』(理論社)で日本児童文学者協会新人賞、『「うそじゃないよ」と谷川くんはいった』(PHP研究所)で小学館文学賞、『ステゴザウルス』(マガジンハウス)、『迷い鳥とぶ』(理論社)の2作で路傍の石文学賞、『そのぬくもりはきえない』(偕成社)で日本児童文学者協会賞、『あたらしい子がきて』(岩崎書店)で野間児童文芸賞、『きみは知らないほうがいい』(文研出版)で産経児童出版文化賞大賞を受賞
植田真[ウエダマコト]
1973年、静岡県に生まれる。絵本や装画を多く手がける他、絵画制作、ライブペインティング、音楽など幅広く活動。雑誌『イラストレーション』で第15回ザ・チョイス年度大賞、『マーガレットとクリスマスのおくりもの』(あかね書房)で日本絵本賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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杏子
21
おじいちゃんの家にある大きなネムノキを伸びすぎて危ないから切るという話を聞いてから、伸夫は悲しみと怒りのために、心がぐちゃぐちゃになってうまく言葉が出なくなってしまう。学校で先生に指されても答えられなかったり、友だち相手にも自分の気持ちを説明できなくなる。生きているもののことを大事に考えるあまり、どうしたらいいのか心がおかしくなってしまう。純粋で繊細な心を持っている証拠だろうが、辛いだろう。そんな伸夫の心の動きをじっくりと描いている。すごくいいことを書いていると思うのに、何だろう。今一つ飲み込めなかった。2021/01/31
おはなし会 芽ぶっく
9
『おすすめ!日本の子どもの本 2022』JBBY選 で紹介されている読みもの。 ぼくが生まれる前からおじいちゃんの家の庭にある大きなネムノキ。けれど大きくなり過ぎたと大人たちは切るという。ぼくはおじいちゃんの想いを大事に、切ることに反対をいうけれど上手く言えなくて…。2023/05/02
鳩羽
8
おじいちゃんの家の大きなネムノキを切る話が持ち上がり、伸夫はそれに反対したが結局枝を落とすことになった。伸夫はその気持ちをうまく大人達に話すことができず、八つ当たりでクモを殺してしまったことも気に病み、塞いでいく。同級生の芳木と犬猫の幽霊が出るという噂の元動物病院へ出かけるようになるが…。伸夫は繊細で、親からわざとかと思われるほど分かりにくい発話をするので、なかなか入り込みにくい話だった。人間の都合で、切られたり、飼われたり、食べられたり、殺されたりする他の生き物との関係を飲み込もうとする話だろうか。2021/01/30
だけど松本
5
こんな友達欲しかったなあ。ていうか今からでも欲しいなあ。そういえばこの人の話って、一生の友達になるといいよね、って関係が出てくるの多い気がしてきた。好きだなあ。主人公がうまくしゃべれなくなっちゃったのもハッキリとはわからないんだけど、そういうこと(時期?)ってあるのかもしれないとあまり違和感なく受け止められた。どうしてそうなったのかとか、どうして変わったのかとか、はっきり作者が書いてしまっていないところがいいのかもしれないと思った。2022/03/09
芦屋和音
2
小4の伸夫は祖父の家の庭のネムノキが伐採されることを知って……。子どもの頃の「上手く言葉にできない」を物語にした良書。言葉にする前に感情の波が襲ってきて、上手く言葉にできない経験は大人でもあるもの。それが言語の幅も狭く感情経験も乏しい子どもの頃だと、どうだろう。変なことを口走ってしまったり、黙り込んでしまったりするのは致し方ないのでは。友人と一緒に、自分の言葉で大人と対峙するシーンは勇気が貰える。母親が割と暖かく見守る系なので救われた。2021/10/13