内容説明
一九四〇年四月から五年間、デンマークはナチス・ドイツに占領された。ユダヤ人迫害の手は、ウッラのピアノの先生にもせまっていた。「先生を家にかくまってあげれば。」と言うウッラに、お母さんは、危険だからかかわってはいけないと答える。ウッラは初めてお母さんに不信感をおぼえる。親友のグレタと遊んでいたウッラは、地下室であやしい人影を見る。やがて二人は、つきまとう密告者におびえながら、ユダヤ人救出に立ち会うことに…。ナチス占領下のデンマークに暮らす、思春期の多感な少女を、自らの体験に重ねて生き生きとえがいた作品。小学5年生以上。
著者等紹介
クロー,インゲ[クロー,インゲ][Krog,Inge]
1932年、デンマークに生まれる。1975年に文化省児童図書賞を受賞
枇谷玲子[ヒダニレイコ]
富山県に生まれる。豊島岡女子学園高校卒業。上智大学中退。2003年、デンマーク教育大学児童文学センターにゲスト学生として留学。2005年、大阪外国語大学卒業予定。『ウッラの小さな抵抗』が翻訳出版デビュー作
杉田幸子[スギタサチコ]
岩手県盛岡市出身。国際児童図書評議会会員。日本児童出版美術家連盟会員。子供や動植物、自然をテーマに、絵本や版画、さし絵などを制作
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
魚京童!
20
抵抗は常に小さい。大きな抵抗は抵抗ではなく反逆とか革命とか呼ばれてしまう。その世界に合わせるのが楽だ。全世界の真理なのではないか。流されろ。私の訓示にでもしようかしら。流される。荒れ狂う濁流に身を任せる。どうなるかなんて知ったこっちゃない。ただ流される。どこかにはつくだろう。天国でも構わない。流れに掉さす。どんどんやれ!そういうことらしい。石に漱ぎ流れに枕す。そんなことできないからやる。まとまりがない。もう何を言いたいのかわからない。2021/07/02
三太郎
2
児童向けながら内容が濃い。ユダヤ人亡命を手引きするシーンをメインにした作品でないのがまたいい。ウッラが抵抗活動に緩やかに参加し意志を固めていく様、密告者の恐怖、両親からの精神的自立・・少女が大人へと変化する過程に占領という衝撃が重くのしかかるものの、確固たる信念の元ウッラは強い大人へと成長していく。ウッラを国に置き換えると、作者の明確なメッセージを読み取る事ができる。まるで非常に分り易いテキストの様に抵抗運動の本質を私達に伝えてくれる良書である。2012/10/08
天茶
0
★★★☆☆2022/07/29