内容説明
料理研究家のさきがけとして、家庭料理の途にあざやかな足跡を印した辰巳浜子。少女時代の自由な学びから、戦中・戦後を自分の才覚と働きで乗り越えた日々。ここには昭和のすがたが描かれている。
目次
第1章 私の「風と共に去りぬ」(終戦のその日から始まった生きるたたかい;混乱のなかでひとつの輪が回りだした;包丁片手の真剣勝負に明け暮れる;春のきざしはわが家の庭の一木一草から;主婦業との二足のわらじに苦労する)
第2章 娘時代から結婚生活に(家庭きりまわしの移りかわり;心のささえになったもの)
第3章 母・浜子の小伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夏みかん
2
凛とした生き方が伝わってくるような文章でした。うちの祖母もそういう人だったので、つくづくこの時代の人たちの凄さを感じるのですが、どうしてそういった気質のようなものが次の世代(自分を含め)にちゃんと伝わっていないのでしょうか。なかなか真似できませんが、「丁寧に」とか「真心をこめて」とかを口癖にするところから始めようと思います。2017/06/07
渡"邉恵'里'
1
2011年刊行。明治37年、東京神田生まれの料理研究家:辰巳浜子の書き残したものを1冊の本にまとめた。大正13年生まれの娘:芳子も料理の道を進む。戦争を挟む激動の時代を生きた二人。母の文章を読むと、しっかりした教育、心のこもった躾、深い愛情や命に対する尊厳などを感じる。大きな魂に触れ、激励されたり、叱られたりしているような、不思議な満足感が残った。偉大な人が普通の主婦として行った仕事の数々を知ると、やはり世に出るべき人だったのだと思わずにいられない。時代が違うのでやや読みにくいところもあるが、価値ある一冊2022/08/21
Satoko Muta
0
「表はもめんでも裏には絹をつけ、着物より、長じゅばんや小物類に渋い心を配り、たびは足にくいいるばかりに、きっちりと、そして光るばかりに真白く、鼻緒の前つぼのかたくしまったはきものを好んだ江戸っ子」この言葉の選び方、リズム、立ち上がってくるイメージの豊かさ。むさぼるように読みました。2012/02/19