内容説明
手の宇宙について、五十人が想いをめぐらせ、自筆で綴った。その手の跡をたどれば、書き手の息づかいが聞こえ、生きる姿があらわれる。
目次
1章 手を合せる
2章 おしゃべりな手
3章 傷めた手
4章 こぶし
5章 六十の手習い
6章 触れる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykshzk(虎猫図案房)
27
50人の作家やその分野で活躍する人が、400字詰め原稿用紙に「手にまつわる随筆」を直筆したものがそのまま本に。内容もさることながら、この人こんな文字なんだ!こんな普通の原稿用紙に書いてるんだ!というのが見えて面白かった。いわゆる悪筆でも個性があっていい。いや、皆、個性だと言い切れる人間だから、悪筆でも良いのだ。ギリギリ判読出来る山田太一の文字はもはや芸術だし、中村吉右衛門は美文字。また、田辺聖子が自分の右手左手にそれぞれ「右丸・左丸」と名付けているというのも面白かった。味のある字をかけるようになりたい。 2024/06/03
HIRO1970
19
⭐️⭐️⭐️新也さんが載っていたので、読みました。『手』に関するお話を直筆手書きで四百字詰め原稿用紙1枚書いて貰う企画の様です。51人の各界の著名人がそれぞれ味のある風情を競っています。美しい字の人、威厳のある字の人、間違いの多い人、難読な人、上手くまとまっている人。なかなか面白い試みだと思いました。好きな作家の直筆がみつかるかも。2014/06/29
Sakie
16
季刊「銀花」連載。原稿用紙1枚の文章はエッセイとしては短い。しかし百様ならぬ五十様の手跡に目が釘付けになった。写真で挟まれたさまざまの手仕事はもちろん、紙一枚の上に表れる文章のなんと自由なこと。達筆どころか、字面が揃わなかったり、マスからはみ出たり、そもそもマス目を手書きしたり。ああ、これでいいんだ、と、近頃自分の手書き文字の汚さに辟易していた私は胸が軽くなったのだ。出版社からいただいた原稿用紙を持ち出し、写経用の筆ペンで、文字を書く遊びを始めた。マスからついはみ出るような、大らかな字を書く人になりたい。2025/01/09
ブルーハート
6
変な本を読み始めた。130ページほどの薄い本だ。写真も多いし、活字も大きい。だが大変読み難い。ああ、こんなに読み難かったのねとつくづく思う。そうなのだ。50人がそれぞれに”手”を巡ってその想いを400字原稿用紙に綴った手跡がそのまま本になっているのだ。これだけで編集者の心意気が伝わるというものだ。手書き文字には人を寄せ付けない気難しさがある。だがそれがまた魅力でもある。50人の手跡をじっくり見てみようじゃないの。爪弾きされるか、手招きされるかは読んでからのお楽しみ!2019/06/13
ありんこ
5
肉筆の原稿で、それぞれ使っている筆記用具も原稿用紙も書くスタイルも違う。それだけでも一人一人の「手」が違うことを証明している。白洲正子さんの「合掌」の話、出久根達郎さんの「手形」の話、岸田今日子さんの「男の手」の話がよかった。2010/05/25