出版社内容情報
ピアノと母から逃れるため、祖母の暮らす町にやってきた中学2年生の惟。この町の噂「ローズさんの呪い」を調べることになり…。
内容説明
この町に伝わる「ローズさんの呪い」。町をさまよう幽霊は夜のアーケード街、学校や教会に現れ、人びとに呪いをかけるのだ…。ローズさんの話を追いかけるうちに、思いもよらない“物語”が見えてくる!ローズさんって、だれなの?文学館を舞台に、都市伝説の謎を解く『赤いペン』第2弾!
著者等紹介
澤井美穂[サワイミホ]
北海道生まれ。常呂郡置戸町という厳寒の地で育ち、高校の国語教諭を経て、児童文学作家となる。第16回ちゅうでん児童文学賞大賞作『赤いペン』(フレーベル館より刊行)でデビュー
中島梨絵[ナカジマリエ]
滋賀県生まれ。京都精華大学芸術学部卒業。個展・グループ展で作品を発表する一方、書籍の装画や雑誌の挿絵を中心に活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
57
中学2年の唯は母と気が合わなくて、ひとり暮らしの祖母のもとにきた。人見知りの唯だったが、町に伝わる怪談「ローズさん」について調べていくうちに、様々な人と出会う。幽霊話と思われていたローズさんが、じつは実在の人物で、意外な人とのつながりを発見する。▽人の噂は当てにならないし、自分の思い込みも見方を変えれば新しい発見がある。気持ちのいい、やさしい物語だった。2018/12/09
Roko
33
中学2年生の惟(ゆい)は父方のお祖母さんの家で暮らしています。唯はお母さんとの生活が息苦しくて、逃げてきたのです。お祖母さんは自分のことは自分でやりなさいというだけで、後は自由にさせてくれるし、学校で友達は出来たし、こっちへ来てよかったと思っています。 友だちが提案した「ローズさんの呪い」を調べることになり, 地元の人たちに聞き取り調査をするうちに、想像もしなかったことがこの町で起きていたことを知ったのです。 「赤いペン」でも登場した、文学館の草刈さんとちはやさんが、この作品にも登場しました。 2024/03/29
なななお
30
児童書、侮るなかれ。いやいや誰も侮ってませんて。最近の児童書は本当に面白い。この作家さんも、二作目ながら作風が完成してる!怪談かホラーかな?と匂わせながら、伏線を幾つも張り巡らせミステリータッチに仕上げつつヒューマンドラマを絡めながらの成長物語。大人には先が読める伏線だけど、子どもは素直に「えー!そうだったの!」と驚いてくれると思う。大人になってミステリー小説に出会った時に、この感じ知ってる!と思って欲しいですね👍「ローズさんの呪い」を調べることにした唯。怪談だとばかり思っていたローズさんだが…。2022/12/13
PAO
25
「自分を…自分の音を大切にしていこうと決めた。唯の音を好きだと言ってくれた人がいたから」…図書館の特集コーナーで印象的な絵の表紙だったので借りて読みましたが、久しぶりに本当の意味での「良書」に巡り合えて大変幸せな気分です。中学生向けなのかも知れませんが大人の私が読んでも懐かしい小樽の風景やさりげなく示される謎や伏線があって十分楽しむことができました。「忖度」や「空気を読む」などとは無縁に自分の人生を生きた「ローズさん」の生涯を辿りながら惟が少しづつ自分に目覚めていく姿と仄かな恋心が眩しくて心が潤みました。2020/01/12
おゆ
16
「赤いペン」がとても良かったので同じ作者のものを探してみたら、文学館の二人に再会できて嬉しい限り。今回もきっと仕掛けがと身構えてしまったせいでラストに驚きはなかったけれど、それでも<お気に入り>本棚に迷いなく追加したのは、やはり本作でも<物語>への姿勢に共鳴したから。都市伝説の調査はそのまま民間伝承の伝播の過程で、民俗学好きの血が騒ぐ。けれどもそれ以上に文学のあり方、書かれたものだけが文学ではないという言及に胸を打たれる。私はそれを物語と呼び換えて深く頷く。そうだ、書かれたものは物語の一部でしかない。2019/08/23