出版社内容情報
おおかみのウォーにお母さんを殺された
こひつじのチリン。チリンは、強くなる
ためにウォーに弟子入りし、かたきうち
の機会をうかがっていたのですが……。
強いことと弱いこと、良い心と悪い心を
考えさせてくれる絵本です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
214
小さなチリン。羊のチリン。その円らな瞳にはこの世の寂しさや哀しみが映っている。大切なチリン、離ればなれにならないように、首元には金色の鈴が付けられている。夜になると雄叫びが聞こえるでしょう。狼がお腹を空かせているの。毛に包まれた羊は食べづらいから襲わないよ。満腹になるためなら何でもするの。本当なのかな。残酷な現実。守られた命。強くなりたい。誰よりも強く。ぼくがみんなを守るために。それなのにぼくは。狼の孤独を知るチリン。切り立つ崖の上、声のない叫びが聴こえてくる。激しい嵐に吹かれても、もう鈴の音は響かない。2024/02/03
masa@レビューお休み中
96
愛情も、憎しみも、感情が激しく動くという意味においては、どちらも同じなのかもしれない。だから、ときどき勘違いをしてしまうことがある。愛しているのに憎々しいと思ったり、憎しみが強いばかりに愛していることに気づかなかったり…。こういうことって往々にして起こる。愛も、憎しみも、どちらも厄介な感情だ。支配しようとしたり、独占しようとしたり、騙そうとしたりするのだから、良い意味でも、悪い意味でも、その相手に対する関心が異様に高くなければできることではない。だからこそ、誰にも理解することもできないような気がするんだ。2013/10/29
積読亭くま吉(●´(エ)`●)
94
★★★☆やるせなくて、切なくて、ただ悲しい。何ものも生み出さない、憎しみという感情に呑まれた仔羊の話し。たとえどんな理由であろうとも、きっかけが愛だろうと、執着は目の前にある物さえ暗闇の中に隠してしまう。読み友Natsukiさんのレビューより手に取りました。なっちゃん、ありがとう2016/02/07
Natsuki
90
表紙の愛くるしい「こひつじチリン」の絵からは想像もできない、悲しくやりきれないお話でした。初版1978年ですが、今だからこそ必要な一冊なのかもしれません。恨みや怒りから生まれるのは悲しみだけ。恥ずかしながら、「アンパンマン」以外の作品を読むのは初めてかもしれませんが、やなせたかしさんの絵本は大切なことを教えてくれています。2016/02/04
糸車
87
広島の熊野、筆の里工房にて。"アンパンマンの生みの親やなせたかし展〜私の名前は希望です〜"に行って来ました。タイトルは知っていたけど未読だった絵本。おかあさんを殺した憎いオオカミに復讐を誓い、本心を隠して弟子入りしたチリン。周りに恐れられ孤独だったオオカミが厳しくチリンを育て、やがてその時が来て…。おかあさんの仇をうったチリンが得たものは喜びではなくて、悲しみ。父であり先生であったオオカミへの"情"。復讐に意味はなかったと気づくチリンはどこへ行ってしまったのだろう。せつないお話だった。2019/08/24