出版社内容情報
高校時代にスポーツクライミング選手としてインターハイにも出場した筑波岳。しかし、訳あって大学では競技を続けないと心に決めていた。
そんな岳に目をつけたのは、登山部の部長・梓川穂高。大学敷地内に勝手にテントを張り、コンビニにでも行く感覚で気軽に山登りに行ってしまう変人だった。穂高の手で岳は半ば無理矢理、登山部に入部させられてしまう。
幾度か二人で山を登ったある日、岳のスマホに高校時代のコーチ・宝田謙介からの電話が入る。しかし、そこからは風の音が聞こえるだけだった――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
32
名を馳せたスポーツクライミングを大学では続けないと心に決めていた筑波岳。変人と噂される登山部部長の梓川穂高につかまり幾度か一緒に山を登ったある日、恩人の滑落死を知らされる物語。高校時代のコーチ宝田謙介からの無言の着信、衝突したままで関係の修復を図らなかった悔恨。彼の死は事故だったのか自殺だったのか、アスリートのセカンドキャリアの難しさ、穂高の山を巡る過去も描きながら、その真相を探っていく展開で、周囲の人に聞いて恩師を思い、自身で同じ山に登って同じ景色を見たからこそ気づいた真理がとても心に沁みる物語でした。2024/07/19
あやっぴ
27
真実を確かめようと、先輩の穂高と共に、その山の頂上を目指す岳。さまざまな思いと後悔にうちひしがれながら、そうとうな勇気が必要だったことだろう。先輩の穂高は大学内では変わり者。最初はそんな彼について行って大丈夫?と思ったけど、優しくて本当に頼りがいがあって、この先輩との出逢えたことが何よりだ。苦労して登った山の頂上からの眺めは、日常の淀みをきれいに洗い流してくれる。私も次は筑波山に登りたい。2024/10/29
Nao Funasoko
27
ライトノベルのつもりで読み始めたたらどっこい違っていた。 筑波岳、梓川穂高それぞれの心情風景、その移ろい加減の描写が素晴らしい。ミステリではないが岳の先輩であり指導者であった宝田謙介の死についての謎ときへの流れにもしっかりとしたものを感じた。 筑波山、高尾山、御岳山、日の出山と自身も歩いたことのある山が舞台となっていたこともあり親しみがあってよかった。岳&穂高コンビの山行記はもっと読んでみたいな。2024/08/07
なみ
21
大学生になってスポーツクライミングを辞めた筑波岳は、登山部の部長で変人でもある穂高に勧誘され、山を登るようになる。 ある日、2人で山に登っていると、岳の高校時代のコーチから電話がかかってきて──。 山の描写が非常にリアルで、登山をしたくなりました。筑波山に登ってみたい! また、競技を引退したプロアスリートたちが、しっかり食べていけるような世の中になってほしいと強く思いました。2024/09/12
純
17
ミステリーではないのに、伏線回収があって、ミステリーのような物語でした。 山登りに持って行って、涸沢でビールを飲みながら読みました。山に行って、山が舞台の本を読む。最高でした。2024/08/02