出版社内容情報
江戸末期。新宿牛込に「天然流指南」と看板をかかげたみすぼらしい道場があった。道場主は酒楽齋(しゃらくさい)、または面胴苦齋(めんどうくさい)と名乗る人を食ったような正体不明の50年配の男である。
だが、雑駁な江戸の町で不思議となじんでいる。朽ちかけた板壁越しに激剣の音は聞こえるものの、出入りしている者も多種多様、何をどう教えているのかもわからない。
そんなある日、山浦逸馬と名乗る若者が、指南を乞うてやってくる。なかなかの凄腕だが、塾頭である津金金太郎に一刀で倒され、入門を希望する。
彼を追うように現れた牧野平蔵もまた同様に入門するが、この二人の間には何か因縁があるらしく緊張感が漂ったままだ。
来るものを拒まず、去る者を追わないのが天然流。酒楽齋は迷いのない剣の腕を持つ津金金太郎に出会い、「あるがままにあることで本来の才を伸ばす=天然流」を名乗るようになったという。
門弟は剣術を学ぶものだけではなく、同心もいれば浮世絵師、果ては盗賊や夜鷹までいて、道場にたむろする変人たち、だがみな、天然と言える技量の持ち主なのだった。
天明の時代の江戸を舞台に、道場主の酒楽齋はじめとする「天然流」の活躍を描く新シリーズ。
内容説明
内藤新宿に天然流道場を開いている酔狂道人洒楽斎は、五十年配の武芸者。高弟には旅役者の猿川市之丞、深川芸者の乱菊がいる。市之丞は抜け忍の甲賀三郎で、七変化を得意とする忍びだった。乱菊は「先読みのお菊」と言われた勘のよい女で、先の先を読むことで舞を武に変じた乱舞の名手。塾頭の津金仙太郎は甲州の山林地主の嫡男。剣で江戸に遊学、負けを知らぬ天才剣士。
著者等紹介
大久保智弘[オオクボトモヒロ]
1947年、長野県に生まれる。立教大学卒業後、都立高校で教鞭をとる。『水の砦―福島正則最後の闘い』で、第5回時代小説大賞を受賞し文壇デビューを果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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