内容説明
昭和三十年。灼熱の閃光が放たれた時から十年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の魂が大きく揺れた。最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか、原爆とは何だったのか…。著者渾身の問題作。第9回手塚治虫文化賞新生賞・第8回文化庁メディア芸術祭大賞を受賞。
著者等紹介
こうの史代[コウノフミヨ]
1968年9月、広島市生まれ。1995年『街角花だより』でデビュー。『夕凪の街 桜の国』にて第9回手塚治虫文化賞新生賞・第8回文化庁メディア芸術祭大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
61
広島の原爆から10年の「夕凪の街」、そしてその後の「桜の国」。時を隔てつながる2つの物語。淡々と、しかしあまりに重くて……感想を書くのがなんとも苦しい。それでもたくさんの人に読んでほしい漫画です。2023/02/18
at-sushi@ナートゥをご存知か?
61
在庫がありません、ってAmazonが言うから、今日ははぢめての電子書籍記念日(//∇//)「セカスミ」(略すな)同様、戦争や原爆の歪さを体験した世代と、現代(と書いて「イマ」と読んでね)を生きる我々とが地続きであるという、ともすれば忘れがちな事実を、のほほん&叙情的なタッチで抉り出し突き付ける手腕が凄い。2016/12/10
ちはや@灯れ松明の火
55
西へ傾く陽が街を淡い朱に染めて、風が静かにまどろむ頃。おだやかな時の流れをふと止めるように。立ち上がり歩き始めた、生き延びた人たち、身体に残されたあの日の傷痕が、心に刻み込まれたあの時の痕跡が、何度も、何度も、時の流れを巻き戻す。なくなった街、いなくなった人々、何故、どうして。ただ生きていただけなのに。いっしょに明日を見たいと思う手を見つけて、触れた、繋いでいたかった。幾度も、幾度も、繰り返すあの痛みが、消えない。ただ、生きていきたいと思っただけなのに。凪が終わる。風が動き出しても、あの刻は、消せない。 2011/08/06
ジョニーウォーカー
27
どんなに悲惨な戦争体験を聞かされるより、人の心に深く届く物語がある。1945年8月6日広島― 原爆で親兄弟を失い、自らも被爆者として生きる皆美の生涯を描いた表題作。被爆者と被爆2世に向けられる目に見えぬ差別を扱った「桜の国」。この2つの物語を、自分は、心から、世界の人々に伝えたい。べつに残酷な殺戮シーンがあるわけじゃない。戦勝国への恨みを綴っているわけでもない。ただ、皆美が残した最後の言葉を聞いてほしいのだ。「原爆を落とした人はわたしを見て“やった!またひとり殺せた”とちゃんと思うてくれとる?」2010/01/14
okame
21
「夕凪の街」皆実の言葉の一つ一つに胸がきゅうと締め付けられた。「桜の国」終戦から数十年経って、平和になったように見えてもその爪痕を残していて・・・機会があれば、ぜひいろんな人に読んでほしいなと思う。2015/02/06