出版社内容情報
千野隆司[チノ タカシ]
著・文・その他
内容説明
廻船問屋戸川屋から借金百二十七両の返済を求める書状が届いた。戸川屋のひとり娘は、元国家老園田頼母の妻女だ。頼母は正紀暗殺を企てたとして腹をつめている。復讐のにおいがするが、新江戸家老佐名木源三郎の調べでは、借金は高岡藩としてなした正式なものであるという。進退窮まった正紀は、ついに商人に屈してしまうのか!?待望のシリーズ第三弾!
著者等紹介
千野隆司[チノタカシ]
1951年東京生まれ。國學院大學文学部文学科卒。出版社勤務を経て、90年「夜の道行」で第12回小説推理新人賞を受賞。時代物シリーズを始めとする著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キャプテン
39
★★★★☆_「おれはサラリー万石フェア(給料が1万円でも下がればバイトに格下げ!)」第一弾。弱小な高岡藩(今の千葉県の上の方)の石高(給料のようなもの)は、ぴったり一万石。一石でも減れば、大名から旗本に格下(社員からバイトになるようなもの)になる崖っぷち大名の奮闘を描く「おれは一万石シリーズ」3作目。恵まれていない環境にいるやつの戦いは、純粋に応援したくなるもの。今回の戦いは、隠されていた借金(闇金のようなもの)。あと嫁(鬼のようなもの)。最後の爽快な展開も好き。満足でした(やたらに注釈つけまくってみた)2019/01/09
外枠発走
33
シリーズ第三作目。紫(醤油)を巡る物語。実石高は一万二千石と聞いてやや安心したが、やはり石高を上げる努力をすべきと思ってしまう。航海技術が発達し、関西の薄口醤油が、江戸を中心に広まっていく様が題材となっている。醤油の製法や薄口と濃口の違いは知っていても、対となる産地がわかっていなかった。野田という強力な産地が近くにあるなか、新しい味を広める手法が鮮やかだった。食のグローバル化の一例。前作と同じ盗品の奪回で終わるのかという諦念を覆す一撃だった。2023/08/17
baba
27
シリーズ3作目。一万石の婿となり財政再建の途についたと思ったら借金返済を迫られまたまたお金に苦労する正紀。それらがきっかけで上から目線の年上の妻京と少しづつ心を通わせ合うようになってこれからが楽しみ。2018/05/24
はにこ
22
前回までの敵だった園田頼母の負の遺産、借金の返済に追われる正紀。負債を返す為に、盗まれた醤油を探すことに。醤油を取り返して商いを広げる為に、京も力を貸す。京はツンとしているけど、正紀のことを考えていてくれていて賢いなぁ。だんだんと心を通わせていくところをこれからも追っていきたい。さて次なる課題は何だろう。2020/08/13
夜の女王
18
シリーズ③ 前巻で反正紀の国家老一派を一掃したものの、今度は切腹した国家老の姻戚である戸川屋から借金返済の催促が!一方、友人で与力の山野辺は龍野の淡口醤油を積んだ船の行方不明と水手の殺害事件を追っていた・・・1巻では水路流通、2巻では塩、今回は醤油(だからタイトルが紫)と毎回経済問題がテーマ。読んでるだけで江戸近郊の流通経済が頭に入ってくる。大名の跡取りが自ら出張ってのチャンバラ劇は相変わらずだが、それ以外は真面目な時代考証がされている。小名木川も中川船番所も行ったことがあるので、想像力が一層膨らむ。2018/08/09