内容説明
川止めで途方に暮れている若侍、伊東七十郎。藩で一番の臆病者と言われる彼が命じられたのは、派閥争いの渦中にある家老の暗殺。家老が江戸から国に入る前を討つ。相手はすでに対岸まで来ているはずだ。木賃宿に逗留し川明けを待つ間、相部屋となったのは一癖も二癖もある連中ばかりで油断がならない。さらには降って湧いたような災難までつづき、気弱な七十郎の心は千々に乱れる。そして、その時がやってきた―。武士として生きることの覚悟と矜持が胸を打つ、涙と笑いの傑作時代小説。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、12年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
203
⭐️⭐️⭐️実家借用本。本年145冊目。葉室さんはまだ二冊目で初心者です。お芝居を観ているかのように物語の筋書きにアッと言う間に惹きこまれました。時代劇ならではの川留めのニクい演出があり、実際はほぼ定点観測になっている上に僅か数日の話ですが、終盤間際に気づいた時にはもうすっかり葉室さんのストーリーに乗せられており、とてもとても途中下車する気にはなりませんでした。四角四面な主人公が生真面目にケジメをつけながら展開して行くお話を読んでいて葉室さんはきっとすごく真面目なお人柄なのではないかと想像しました。2015/12/20
やま
196
川あかり 2014.02発行。字の大きさは…中。伊東七十郎は、派閥の領袖から江戸から帰国する家老を討つため刺客を命ぜられる。七十郎は、藩で一番の臆病者であり剣術はからっきし駄目である。捨て駒として刺客を命じられる。家老を討つため巨勢川まで来たが、あまりの雨で川止めになっている。木賃宿に泊まり、そこで知り合い、助け合った者たちが、七十郎の友となり家老を討ちに行くと我が身を捨てて七十郎を守ろうとする。七十郎は、お互い死を覚悟して友を守ろうとする。人は、ここまで成長するのかと思い、感極まるものがありました。2019/12/19
酔拳
143
藩でも臆病者で有名な主人公が、家老を討つ刺客を命じられるが・・・・長い雨で巨勢川で川止めにあい、宿で長逗留をすることになるのだが、合部屋になった5人が一癖二癖ある人達でおもしろかった。また、その5人はおもしろい人たちなのだが、人生に大きな悲しみを抱えた人達というのも、興味深った。主人公が5人と関わりをもつようになり、主人公の心の変化が楽しかった。最後の主人公が得る心境がなんともいえず、すがすがしい。友情の大切さを教えてくれます!2018/01/10
じいじ
135
面白かった!気分爽快な読後感です。主人公の若侍・七十郎はじめ、彼を脇で助ける者(男も女も)たちの人柄が際立ってカッコいい。藩内一の臆病で小心者の若侍に命ぜられたのは、私腹を肥やす悪徳家老の暗殺。それは正義か?はたまた陰謀か?―男たるもの惚れた女のためなら…、それが成就せぬ恋だと分かっていても、命をいとわず戦います。一度会った女たちがみな惚れてしまう七十郎が、最後に下す恋のゆくへが気になります。笑って泣けるエンタメ時代小説の傑作はおススメです。2017/07/25
chiru
133
思わず『がんばって!』と応援したくなる、読後感最高の物語✨ 臆病な七十郎は、好きな女性からの猛アプローチでさえ拒むストイックな侍。そんな彼が刺客に大抜擢‼ 気弱だけど、定めた目標に迷いなく突き進む純粋さに胸が熱くなる。弱い心を打ち砕く、イザという時の『漢』の見せ方が憎いほどかっこいい✨ 最初からヒーローだった人物の物語とは違う、成長と前進の物語。“本当の強さ”とは、己の弱さと使命を受け入れることで生まれるのかもしれない。彼と一蓮托生なタフな男達の絆とアシストに感動✨ ★42020/08/08