内容説明
昭和55年、川崎市の新興住宅地に住む一家を突然襲った惨劇。それは、浪人中の次男が両親を金属バットで殴り殺すという、震撼すべき出来事だった。恵まれた家庭に育った青年が心に宿していたものは何か。丹念な取材と、緻密な構成で事件の全容に迫った力作ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
40
昭和55年に川崎市で実際に起きた尊属殺人を扱ったノンフィクション。当時の関係者にインタビューをし、有識者の意見を踏まえながら、事件の真因を明らかにする試みです。被害者の出自まで遡って念入りに調査をし、事件を再現していくあたりが、推理小説形式のいわれなのでしょうか。現在においては新味もないし説得力も希薄です。その時々を切り取るノンフィクションの宿命なのかもしれません。緊張感のある文章表現や事件発生に至るまでの迫力ある構成は、一気に読みの力があります。むしろ書物として、そちらをみていくべきなのかもしれません。2017/02/08
gtn
6
いい子を演じきれない絶望感。次男は全てをリセットしたかったのだろう。しかし、それは父親も同じではないか。職場での行き詰まりを悶々と抱え込む。似た者親子である。確固たる哲学がないがために、絶対的な価値が分からない。次男は逃げ場所を求め、一番大きな障害である両親を消滅させる。これも、たまたまである。場合によっては、父が閉塞感から脱出するために息子に手をかけたかもしれない。2019/03/31