出版社内容情報
高校を舞台に、何かと同級生と比べてしまったり、将来に悩んだり、圧倒的な才能を持つ生徒を前に諦めてしまったりする生徒たちが、自分は何者なのか? これから先の自分は? と悩みながらも答えに行き着く姿を日常の謎を絡めて描く青春群像劇。「あの頃」の気持ちを思い出しながら謎解きを。注目の新人作家による青春ミステリー。第42回小説推理新人賞受賞作を含む全5篇の連作短篇集。
内容説明
学年の人気者が立候補した生徒会選挙で集まった白票、未解決のままだった部室荒らしの犯人、陸上部の合宿中に消えた少し変わった部員―八津丘高校で起こる「謎」を前に、生徒たちはどうする?謎が解けても、僕たちの日常は解決しないことがある。思春期の嫉妬や羨望、葛藤を抱えた高校生の姿を描いた青春ミステリー。第42回小説推理新人賞受賞作を収録した連作短篇集。
著者等紹介
藤つかさ[フジツカサ]
1992年兵庫県生まれ。2020年に「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題)で第42回小説推理新人賞を受賞。受賞作を含む短篇集『その意図は見えなくて』でデビュー。他の著書に、同じ高校を舞台にした『まだ終わらないで、文化祭』がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
28
自分は「凡人」であり幼馴染のユウを尊敬している高校生の清瀬。そんな彼が幼馴染のために謎を解き明かしてゆく青春ミステリ。生徒会選挙で異常に多かった白紙、陸上部の部室荒らし、部活の合宿中での脱走、合唱コンクールの人間関係、中学時代のエピソード、文化祭パンフレット紛失事件といった謎を、幼馴染ユウのためながら汚れ役も厭わない冷静沈着で分析力もある清瀬が解き明かしていく姿を、視点を変えながら描いていく構成になっていて、清瀬のユウへの傾倒ぶりも気になりますが、謎よりも人間の感情からくる複雑な思いが印象的な物語でした。2024/06/12
おうつき
15
独特の読み心地の青春ミステリ。最初の生徒会選挙の不正にまつわる謎でなんとなく古典部シリーズを思い浮かべていたら、やはり著者は米澤穂信フォロワーらしい。だけど、米澤作品とはまた違った独特の読み心地で、高校生が現れた謎についてどのように向き合うか、という部分に新鮮味があった。事件を解いたその先がむしろ今作の大事な部分なのかもしれない。『ルビコン川を渡る』が一番良かった。2025/01/30
huraki
8
主人公の通う高校の生徒会選挙で紛れ込んだ白票を巡る謎を描いた表題作を含む連作短編集。想像や理性だけでは何も救えない。与えられた事実から推論を重ね真相を導き出す探偵役の裏で、遣る瀬無い現実を少しでも変えるため暗躍する清瀬と佐竹先輩の葛藤と思いがほろ苦い。けれど登場人物たちの心情に寄り添った二人の行動はきっと誰かを救っている。続きも読みたい。2024/06/23
qoop
6
探偵はなぜ謎を解くのか、そのモチベーションに焦点を当てた日常ミステリ。冒頭から謎を提示するスピーディな展開。多くの青春小説で箱の場面に友情や恋愛など人間関係を見せたり主人公の暮らす環境を見せ場として読ませたりすると思うが、それを廃した幕開けが意外だった。それでいて自分を他者と比較しがちな十代の心情をミステリの中に落とし込んで読ませる点が巧い。2024/06/06
himanaka
1
藤氏の感性と挑戦を感じる意欲作。理性と想像力だけでいいのか、探偵は犯人を特定するだけでいいのか、その先の行動こそが大切ではないかという探偵小説へのアンチテーゼがまっすぐで良い。2024/06/30