出版社内容情報
中学教師の華に一人の女子生徒が言う。男性教師に告白したが、返ってきた言葉は「五年後に言うてくれたら嬉しいのに」だったと。それは、のちに華の夫が命を落とすきっかけとなった言葉でもあった。人間のささやかな悪意、不器用さ、弱さなどを、元中学教師である著者が教師を主人公に描く。第40回小説推理新人賞受賞作家のデビュー短編集、待望の文庫化!
内容説明
大阪の中学校で働く教師の華に、一人の女子生徒が言う。ある男性教師に告白したものの、返ってきた言葉は「五年後に言うてくれたらうれしいのに」だったと。それは華自身が、のちに夫となる啓吾から言われた言葉であり、そして啓吾の命が奪われるきっかけとなった言葉でもあった。「教師」という人間を通して浮き彫りになる嫉妬や悪意、弱さや狡さ。そして、ラストで胸に兆すささやかな希望とは―。第40回小説推理新人賞受賞作を含む、元中学教師による注目のデビュー短編集。第40回小説推理新人賞受賞作。
著者等紹介
咲沢くれは[サキサワクレハ]
1965年大阪府生まれ。立命館大学二部文学部卒業。中学教師を務めたのち退職し、2018年「五年後に」で第40回小説推理新人賞を受賞(選考委員 桜木紫乃、朱川湊人、東山彰良各氏)。本作がデビュー短編集となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
32
女子生徒が男性教師に告白した返事「五年後に言うてくれたら嬉しいのに」を聞いた女教師の思い。人間のささやかな悪意、不器用さ、弱さなどを教師を主人公に描く連作短編集。女生徒の言葉に苦い過去を思い出す女教師、波止場で毎日息子を待つ老女と統廃合間近の中学校教師、余命わずかな母親の人生を考えてしまう教師、過去に友人へのいじめに無力だった自分を悔いる教師が気づいたいじめ、家庭に問題ある生徒に向き合う教師。後味も良くない表題作はインパクトがありますが、それだけではない教師のありようを浮き彫りにする印象的な短編集でした。2023/07/28
ミーコ
17
ジムで読む為に電子書籍を購入しました。表題作は余り好きじゃなかったです。残された元生徒に奥さん 一緒救われない気持ちのままな気がします。一番 心に沁みたのは「眠るひと」私の母親が、3ヶ月前に他界したので、他人事と思えなかったです。ウチは何でも話す母娘でしたが… とっくに亡くなった息子を毎日待つお婆さんの話は哀しかったです。最後の話も先生の葛藤 生徒の思い 先生も人間なんだな と思った。余り期待してなかったのですが、良い本に巡り会えたと思います。2025/03/10
練りようかん
12
四短編収録。いずれも主人公が中学教師で苦い過去を背負い、生徒の現況とのオーバーラップを区切りなく滑らかに展開。職業人と個人の狭間で悩みながら頭より行動が先に出てしまう生々しさが良い、脇役の顔が見えてくる造形描写と端緒を開く会話、高齢者が多く過疎地域の渋いムードと若者の甘ちゃんな万能感が互いを引き立て、暗闇から希望への流れが静かな感動を抱かせた。表題作は女生徒の告白に返した言葉が驚異の変換をみせ目が点。最も怖い瞬間だった。また滋味深く好きだなと思ったのは「渡船場で」。どの短編も没入させる筆力で面白かった。2024/09/03
おうさま
5
初咲沢作品。中学校の教師をしていた作者だから描ける、リアリティのある作品。重々しいわけではないが、先生たちが抱えている悩みなど、とてもリアルに感じられた。2023/10/27
ryo1
5
なんかすぐ読み進めたいと感じなかったのですよ。もちろんワクワクして手が止まらない読書も良いのですが、なんなら1週間後に続きをちょっと読みすすめるような、むしろ一気に読むのが憚られるようなそんな文章でしたが、心地よかった。4編の短編で主人公が教師ということ以外は共通点はありませんが、どの主人公もすごく考える人でした。そういう点では教師の特性を生かした作品といえまるのかな。あっと驚く仕掛けはなく、ほんのり小さな希望をともして4作とも物語は終わります。丁寧に普通の人の生活を切り取っています。2023/09/15