出版社内容情報
民営刑務所で働くことになった河合凪は殺人犯の阿久津に興味を惹かれていた。彼は長期受刑者だが悠々自適に生活していて何かがおかしい―‐。看守と囚人が織りなす人間模様を描いた傑作ミステリーが文庫化!
内容説明
新人の女性刑務官・河合凪は問題だらけの民営刑務所で働くことに。受刑者に暴行を加えるノイローゼ気味の刑務官。深夜に自らの冤罪を訴え叫びだす囚人。凪自身は姉による父親殺しのトラウマを抱えていた。だが、自由気ままに振る舞う報復殺人犯の阿久津真哉と接するうちに過去と向き合うようになっていく。受刑者の罪と繋がる刑務官達の意外な過去、次第に明らかにされていく殺人事件の真実。懲りない囚人とわけあり看守が織りなす人間ドラマから、最後まで目が離せない。
著者等紹介
織守きょうや[オリガミキョウヤ]
1980年、イギリス・ロンドン生まれ。早稲田大学法科大学院卒。元弁護士。2013年、第14回講談社BOX新人賞Powersを受賞した『霊感検定』でデビュー。15年『記憶屋』が第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞し、映画化される。21年『花束は毒』が第5回未来屋小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
112
被害者遺族であると同時に復讐の加害者でもある囚人と、自分を守ってくれた加害者家族の女性看守。重い過去を背負った2人が出会った時、罪を犯した者と見張る者との輪舞曲が動き出す。理性でわかっていても感情で法を犯してしまう人の弱さが刑務所であらわになる経験を重ねて心が通じ合った彼らが、自分の心に正直になる最終頁が深いカタルシスをもたらす。また途中で登場する若き日の高塚弁護士にとって、この刑務所での経験が法より人を優先する実践教育の場となった。いつかこの3人が再会し、本当の正義とは何かを確かめる物語を読んでみたい。2023/06/25
タイ子
89
民営刑務所が舞台、そこで働く看守と受刑者の関係を描いた作品。刑務所とは避難所なのか檻なのか。それがタイトルになっている。とはいえ、何らかの罪を犯して懲役刑になったからここにいるわけで何かを抱えていることは違いない。その何かがそれぞれに少しづつ明らかになっていく。受刑者だけではなく、看守も過去を抱えて彼らと向き合っている。高塚弁護士が初登場、彼が再審請求するために向き合う受刑者がとんでもなくワル。その事件解決までの展開がミステリになっていていい。受刑者、看守の抱えるものは違うが人間同士のドラマは面白い。2023/04/19
sayuri
54
民営刑務所が舞台だが、荒々しさは感じられず、むしろ静けさを伴いながら物語は進んでいく。五話収録の連作短編は各話ごとに視点が変化する。新人の女性刑務官・河合凪と復讐殺人を犯した囚人・阿久津真哉の二人を中心に、事件に関わった者達の心情が丁寧な心理描写で描かれる。被害者は加害者になり、新たな被害者を生む。負の連鎖を断ち切る事の難しさを痛感する。少年法で守られ、罪悪感を持たない少年や、家庭内暴力を繰り返す輩に怒りが込み上げた。文中に何度も登場する「後悔してますか」の言葉が印象的。看守と囚人達の思いが胸に迫る一冊。2023/06/08
Nyah
50
民営刑務所の新人刑務官の河合凪は受刑者らしくない126番阿久津に興味を持つ。阿久津も聞いたら名前を答えた凪に驚く。‥北田と彼女だけが答えたから。そして「人を殺すのも人で、殺さない人とは違う事情があっただけだから」/ 所内リンチ、受刑者に面会に来る記者、裁判傍聴した女、手紙を書く宮木、別荘地に出没する熊のような赤崎、赤崎の弁護を依頼された高崎(あの木村&高崎の👏)、被害者家族と多くの登場人物の視点で進む群像劇。罰として収監され、罪を悔いても反省なくとも刑期満了すればシャバに出る。中にいる人たちのキモチ。2023/07/25
坂城 弥生
41
看守、囚人、弁護士…それぞれにドラマがあった。2023/04/13