出版社内容情報
我が子を失った夫婦、イジメに遭い転校を決意した少女、離ればなれになった家族の再生を願う少年、妻の介護に疲れ死に場所を求めて旅に出る老夫婦、絶縁した父の余命を聞き故郷に戻る青年……鉄道を舞台にした感動の家族ドラマの最新作。時代小説の名手が贈る、苦難の時代に家族の絆に寄り添う9つの物語。
内容説明
妻の介護に疲れ、行政の支援からも見放された夫は、長年連れ添った愛妻を連れ、死に場所を求めて旅に出る(表題作「駅の名は夜明」)。幼い娘を病で失った母親が、娘と一緒に行くと約束したウィーンの街に足を運ぶ。そこで起きた奇跡とは?(「トラムに乗って」)。病で余命いくばくもない父親に、実家を飛び出し音信不通だった息子が会いにいくと…(「背中を押すひと」)。鉄道を舞台に困難や悲しみに直面する人たちの再生を描く九つの物語。大ベストセラー『ふるさと銀河線 軌道春秋』の感動が蘇る。
著者等紹介
〓田郁[タカダカオル]
兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒業。1993年、集英社レディースコミック誌『YOU』にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。2008年、『出世花』で小説家としてデビューする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
akky本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
331
人それぞれ、困難や悲しみを誰にでもあると思う。そんな困難や悲しみを乗りこえるための道がいくつもある中で、希望と光のある道を見つけて前に進みたい。たとえ、その先にも困難や悲しみがあっても、幸福だってあるのだから、どこまでも続く線路のように、自分のどこまでも続く人生という道を歩めればと思う。間違いも後悔もあるかもしれないけど、自分の選んだ道は正しいと信じたい。九つの短編を通してそう思う。切なさの中に温かさと優しさがふんわりと包みこんでくれて、困難や悲しみの中でも立ち上がろうとする人達の見事な再生物語。2022/11/07
三代目 びあだいまおう
234
1話目ですでに落涙。琴線を触れてくる場面は人それぞれだろう。高田郁劇場では涙が心を洗い、少し人にやさしくなれる。時と場所を選ばないと後悔する。あとがき『幸せを心から望めども、人生はそう容易くはない。誰しも病や老いから逃れられず、思いがけない災禍に見舞われることもあります。そんな時、声を限りにエールを送られると、却って辛さが増すこともあるでしょう。NOT DOING,BUT BEING―何もしない、でも、傍にいる。九つの物語が、あなたにとって、そんな存在になれれば、と願います』余韻が静かに漂います‼️🙇2024/07/02
のり
227
「高田郁」極上の短編集。決して時代小説だけではない事を証明する第二弾。誰もが利用する鉄道を通しての様々な人間模様。人それぞれ抱えている事情は異なるが重い事は確かだ。抱えきれない重荷をふと軽くしてくれる出会い。世の中まだまだ捨てたもんじゃないと思わせてくれる。想像を掻き立てられる終わり方も好ましかった。とにかく高田郁は最高の書き手だ。2022/12/31
ふじさん
227
夫と別れ、幼い娘を失った母親が娘と一緒に行く約束したウィーンの街での人生の再生を描いた「トラムに乗って」、妻の介護に疲れ、長年連れ添った愛妻を連れ、死に場所を求め旅に出て、夜明の駅での妻の一言「おうちに帰ろう、ふたりで」で生きる道を選ぶ「駅の名は夜明」、余命いくばくもない父親に、実家を飛び出し音信不通だった息子が会いに行き、父親との確執が解け、新たな歩みを始める「背中を押すひと」等。鉄道を舞台に困難や悲しみを乗り越え、再生する人々の姿を優しい視線で描いた作品で自分の人生と重なる部分も多く、心に染み入った。2022/11/16
KAZOO
217
高田さんの「ふるさと銀河線」に続く短篇集です。9つの作品が収められていてそのうちの最初の6編は2作づつの連作(人物や乗り物など)になっています。また最後の1編は高田さんが作家になることを決心された作品のようです。どれも年寄りのわたしにとって涙腺を刺激するような話ばかりでした。たまにはこのような作品を読んでみるのも気分転換を図るうえでいいことなのでしょうね。2023/08/04