出版社内容情報
六年前、武内譲は無差別に二家族を惨殺し、動機を明らかにしないまま拘置所で自殺した。遺族の栗山香那と進藤小雪は事件当時の武内と同じ二十歳になったとき再会する。小雪は「事件をあらためて調べよう」と香那を誘う。二人が真相を追うごとに気づかされるのは、世代を越え女性憎悪の感情で繋がる男の存在だった。ミソジニー、女性憎悪の闇を追う長篇サスペンス。
内容説明
六年前、武内譲は二つの家族を惨殺し動機を明らかにしないまま拘置所で自殺した。遺族の栗山香那と進藤小雪は事件当時の武内と同じ二十歳になったときに再会する。「事件を改めて調べよう」と小雪は香那を誘う。なぜ私たちの家族が殺されなければならなかったのか。真相の周縁にあったのは、世代を超えて女性憎悪の感情で繋がる男の存在だった。注目の作家がおくる長篇サスペンス。
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第十九回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第二十五回小説すばる新人賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まさきち
90
突然身内を殺害され、家族崩壊に見舞われた二人の少女の再生と、彼らから家族を奪った犯人の背景に脈々と流れてきた過去の怨嗟を解き明かすサスペンスといった趣。それぞれは非常に面白く読み進められましたが、少々詰め込み過ぎの感もあり、それぞれ別の話としてより肉付けされて手にしてもなどと生意気なことを思いながらの読了です。2024/05/09
アッシュ姉
83
家族が惨殺された理由を知るために、獄中自殺した犯人の背景を調べることにした娘たち。どんな理由であれ納得できないし、生い立ちがどうであれ許せるものではない。鬼畜の男どもがぞろぞろ出てきて嫌悪感が止まらない。理解できないし、理解したくもない。やだやだいやいやと言いながら、読んでしまう櫛木さん。読み終わって疲労感でいっぱいだったのに、早くも著作が恋しいとは恐るべし。2022/05/31
annzuhime
58
理不尽な事件で家族を失った2人の女子中学生。それから6年の時が過ぎ、被害者遺族と刑事がそれぞれ動き出す。なぜあの事件は起こったのか。当時の時代背景に見える女性憎悪。サスペンスと見せかけ、日本のかつて存在していた黒歴史に切り込む。途中からグッと重厚感が増した、辛い内容でした。特にあの手紙を思うと切ない。読後は無力感を感じる。2023/08/18
NADIA
55
千葉県の閑静な住宅地に、その時「たまたま施錠されていなかった」二軒の家に押し入り、そこに居た家族を殺害した武内譲。彼は動機のほとんどを語らず拘置所で自殺した。当時、中学生だったそれぞれの遺族である香那と小雪は、大学生になり東京で再開。事件がなぜ起こったのかを協力して調べることに。犯人である武内が囚われていた女性蔑視の感情の原点とは。「からゆきさん」という言葉は聞いたことがあるが、こんなに悲しい歴史があったとは…。そして、苦労の末に事件の原因が判明しても、壊れたものが決して元に戻ることはない虚しさが悲しい。2023/09/04
akiᵕ̈
55
香那と小雪、同級生でもある2人の家族が惨殺され、犯人は拘置所で自殺してしまう。なぜ殺されなければいけなかったのか、その真相が知りたくて動きだした2人の前に新たな殺人事件が。ここからタイトルのような、暗黒のどろっとしたものが纏わりつく不穏な世界に引き込まれていく。明治から昭和初期の頃、女性たちは外国で自分の身を犠牲にしてまで家族の為にお金を作って必死だった。男たちの身勝手で恐ろしいまでの男権主義者に従わざるを得ない者、そこに憧れる者。そんな輩たちに当時苦しめられた女性はたくさんいただろう。光の見えない読後。2021/10/09