出版社内容情報
凄惨な通り魔殺傷事件が起こった。青年が次々と人を襲い、男女二名を殺害し、ほか二名を傷つけた。青年は死刑囚の息子で、加害者家族への嫌がらせのため、生きる希望を失い犯行に及んだと供述している。青年の心の闇に興味を抱いた水木弁護士は弁護を買って出たのだった……。
内容説明
凄惨な通り魔殺人事件が起きた。多くの人で賑わう休日の美術館のなか、二人の男女が凶刃に斃れた。逮捕された男は死刑囚の息子で、死刑判決を望んでいる。男は、社会から苛酷な仕打ちを受けてきたと語り、その社会が責任をもって自分の命を奪うべきだと主張する。男の心の闇に興味をおぼえた水木弁護士が弁護を買ってでたのだが…。加害者家族に光を当てる社会派ミステリー。
著者等紹介
小杉健治[コスギケンジ]
1947年東京都生まれ。データベース会社に勤務のかたわら執筆した「原島弁護士の処置」でオール讀物推理新人賞を受賞しデビュー。『土俵を走る殺意』で第11回吉川英治文学新人賞、『絆』で第41回日本推理作家協会賞長篇賞を受賞。人気時代小説シリーズの他、法廷ミステリーを始めとする幅広いジャンルで活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まるぷー
30
死刑になりたくて無差別殺人を犯した陽平。父親も強盗殺人での死刑因で、陽平は死刑因の子として悲惨な生活を送ってきた。水木弁護士には何も弁護せず死刑になるようにしてほしいと依頼する。弁護士の使命は被告人の利益を考えること。死刑の判決をとることは被告人の利益なのかと考える。水木は事件を検証するうちに二人の男女の被害者、義弟、陽平の恋人から意外な真相に辿り着く。裁判が始まるところで終わるが、波乱が予想される法廷場面を読みたかった。加害者家族も被害者となる世間の偏見の目、ネットの拡散の怖さをおもい知った。2022/03/08
はち
25
小杉健治さんの作品は現代物数冊しか読んでいないけど、父と子の情のようなものがヒシヒシと伝わってくるものが多い。無差別殺人、それも死刑囚の息子が「死刑になりたくて」という衝撃的な始まりだった。ネット社会の今、加害者家族が身を隠して生きることは難しい。主人公である弁護士は、彼の本意を知りたくて無償でその弁護に乗りだす。彼の本当の動機は?負の連鎖を断ち切ろうと、、ラストはやはり胸熱だった。ただ、父親の冤罪疑惑はどうなったのだ!そこもスキッと終わって欲しかったなぁ。2021/07/24
Tomomi Yazaki
24
喜ばしいことに、文字がデカい!それはさておき、物語は無差別殺人から始まった。犯人はすぐに捕まった。人を殺した理由は、死刑になりたかったから。最近そう言った事件が増えてきているけど、なぜ?死刑囚の子供として生き地獄の中で育った犯人。その背景にある加害者家族の苦悩や悲痛な叫び。だが、悲観して自暴自棄になったわけではない。その理由を聞いた弁護士は、悩み、そして困惑する。読み手は改めて理解するでしょう。人の心の中までは、裁判官や弁護士、増してや検察なんか永遠に分からないであろうことを。2021/08/03
丸々ころりん
19
無差別殺人事件で逮捕された男は死刑囚の息子だった。 幼い頃から蔑ま差別をされ育った。 そんな世の中から消えたい自分も死刑になりたい。 弁護士はその言葉に疑問を感じ過去の事件から調べはじめる。 本当に思いつき⁉︎ 調べるうちに青年の真意が… 罪を憎んで人を憎まず。 この気持ちを持つには…並大抵のことではない。 サラッと読んだでけでは計り知れない,家族に対する愛情が見えるお話です。最後たたみかけるよう真相に近づく。 もう少し,父親の事件•生い立ちが描かれていた方が良かった様に思いました2024/04/15
ねずみひろし
13
本の帯に死刑囚の子どもは幸福になれないのか?とあります。もちろんなれますと言える世の中であってほしいものです。2人が殺害される通り魔的な事件が起き逮捕された容疑者は犯行の動機を死刑になりたいからという許さない事を言う。しかし水木弁護士が真実を探ぐり出してくれた。全て社会が悪い訳ではないが社会が少し寛容であったならば、このよううな事件は起きなかった残念なかぎりです。2021/09/26