出版社内容情報
両親と喧嘩をして実家を出た久美。身を寄せたのは13年間疎遠だった兄の家だった。彼は郊外の瀟洒な一軒家に、やや翳りのある物静かな雰囲気の美しい妻と暮らしていた。兄夫婦との居心地のよい生活がつづいていたが、底知れぬ不幸は音もなく近づいてくるのであった(『やさしい夜の殺意』)。予測不能のサスペンス短編集!
内容説明
両親と喧嘩をして実家を出た久美。身を寄せたのは13年間疎遠だった兄の家だった。彼は郊外の瀟洒な一軒家に、やや翳りのある物静かな雰囲気の美しい妻と暮らしていた。兄夫婦との居心地のよい生活がつづいていたが、ある日、久美の親友の麗子が死体で発見された(「やさしい夜の殺意」)。平凡な日常生活と隣り合わせの底知れぬ不幸。それは波が押し寄せるようにひたひたと近づいてくるのであった。予測不能のサスペンス短編集!
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「妻の女友達」で第42回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。95年『恋』で第114回直木賞、98年『欲望』で第5回島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で第19回柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で第62回芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で第47回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
104
小池さんの小説は、安定しているから安心して読めます。5話の短篇集ですが、構成組立ての巧さに加えて男と女のドロドロした話も、不安と緊張感を抱かせながら、スカッと読ませてくれます。表題作は、タイトルに据えた作品だけに、男女の感情の駆け引きのアヤが巧く描かれていて面白い。私的には【それぞれの顚末】が好きです。人間は概して窮地に立つと、悪い方に考えてしまいがちです。或る夫婦が偶々、自分も乗る飛行機に爆弾を仕掛ける不審者を、空港で目にします…。そして、 意外な結末が待っています。2021/03/30
キンモクセイ
50
平凡な日常生活の中に潜むブラックな出来事。それはある日突然やって来る。「やさしい夜の殺意」家を飛び出し向かった先は13年も疎遠だった兄の所。ここに来なければ誰も不幸にはならなかったのに。「それぞれの顛末」場所がモスクワ空港もブラックだ。これがハワイやグアムだったら考えもしない。同じ飛行機にスパイ疑惑の女性と10時間も同乗は耐えられない。その中で2組の男女の腹黒さも顛末もブラック。「青いドレス」執行猶予中の男に事故を見逃す条件はサスペンスの王道。青いドレスだけじゃなくて爪の色まで抜かりなく。そこ大事だから。2021/09/10
カブ
36
ボタンの掛け違いか、選択の誤りなのか、ちょっとした違いで不幸にみまわれる主人公たち。まるでオムニバスのドラマを観ているような5編の短編集です。どのお話も最後までドキドキしました。2021/01/10
ぐうぐう
29
『やさしい夜の殺意』は、1990年に単行本が刊行されている。ミステリ作家として脂が乗っている時期の、実にバラエティに富んだ短編集だ。特に、コメディとして読める「それぞれの顛末」は、執筆の数年前に起こった大韓航空機爆破事件から着想を得ていて、その怖さに現実感があるからこそ、コメディとなり得ている。どの作品もシニカルな展開が待ち受けているが、それは小池真理子の人間観察(と同時に、人間への興味)の賜物だろう。2022/04/13
アコ
26
5篇収録のサスペンス短編集。1993年刊の中公文庫の新装版。どうしても時代を感じる描写は多いけど(例:登場人物の名前、女性たちの控えめな立ち振舞や飛行機の喫煙環境など)読みやすいし、情景が目に浮かんでくるのはさすがといったところ。どの篇もちょっとしたズレが物語のキーとなっており、中でも『青いドレス』のものが印象深い。『それぞれの顛末』もよかった。※神秘的な表紙絵は青依青さん2021/08/08