出版社内容情報
心を寄せ合いながら離ればなれになってしまった愛しき人。その記憶が蘇るとき、目の前に切なくも不可思議な奇跡が……。日常の中に潜む、儚くも心温まる五つの物語。多くの感動を呼んだ短編集『穴おやじ』を改題、文庫化に際して書き下ろし一編を追加収載。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
167
もう会うことも叶わない人、離ればなれになった大切な人、忘れかけてる思い出、それらをあたかも風が不思議さと一緒に連れてきたような情景が浮かぶ五つの物語。その中で、“からすが丘”だけは別物か。それでも息子の雄平が解決策を連れてきたということなのかな。多かれ少なかれ、人には忘れらない大切な人や思い出はあるもの。どの話も情景が浮かぶ。カラスとのバトルも浮かぶけど、それは勘弁だけどね。思い出は思い出のまま、思い出とは手を繋がずに、どう転ぼうが、まだ見ぬ未来をしっかり歩んでいきたいと、この物語を読んで思った。2022/06/05
初美マリン
116
大人の童話と思える短編集。ずっと思い続けることは深く素晴らしいことなのだが、郡上踊りを背景にした吉田川だけはあまりにつらい。初恋の人をあんなにも思い続けられたら婚約者の心は壊れてしまう、ちょっと納得のいかないつらい章だった2022/07/15
やま
94
想い出の人と巡り合うために…、突然に別れた人を想い、再会の五つの物語。特に「穴おやじ」は、一途な愛です。涙が出て、胸がジーンとして凄くよかったです。中学1年で突然別れた憧れの女性と57年ぶりに再会します。偶然というより運命を感じます。そして「風の栖」は、突然に失踪した恋人に会うために山に登り続ける物語です。恋人が山で亡くなって烏天狗になって関東の山々に居るのを探すために山に登り続けます。これは、ちょっとSFですがいいです。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。2021.09.26~30読了。★★★☆☆2021/09/30
ポチ
50
心の奥にずっと消えずに残っていた、忘れられない大切な人との思い出。出来る事ならまた会えれば嬉しいなぁ。風の晒が特に沁みました。2022/01/18
future4227
48
気分的に号泣本が読みたくて、泣けると噂のこの本を手にとった。世にも奇妙な物語的な不思議な話が織りなす5つの短編集。幽霊とか登場してるのに微塵も恐怖を感じることもなく、感動ストーリーに仕上がっている。自分にはどうにもできない事情で引き裂かれた思いは、何年経っても何十年経っても心の中に生き続けているんだなぁ。5編のどの話もジーンとくる読後感が良かった。特に最後の『風の栖』は周囲の乗客の訝しげな目にさらされながら、通勤電車の中で泣きながら読んだ。元気に明日への一歩を踏み出そうという思いにさせてくれる一冊。2020/09/04