出版社内容情報
人気エッセイストの小説処女作が待望の文庫化!「僕に何かお役に立てることがあったら、いつでも言ってください。仕事のことでも、それ以外でも」「今、ひとつあるんですけれど……十数える間、よりかからせていただきたいんです」(「分別ざかり」)。五話の短編、すべての主人公がシングル中年女性で、変わらない現状に倦み、あるいは突然の変化に戸惑い、はたまた寄る辺ない自分を見つめ直したりする。童心にかえったり、また恋をしたり……。人生の風が再び吹き始める。40代以降の女性に贈る、等身大の応援歌。(『空き家再生ツアー』を文庫化に際して改題)
内容説明
思い切ってこの旅に出てよかった。52歳のバツイチシングル、室篤子は5年交際している相手には不信感が芽生え、職場では早期退職を促されている。「この土日はいないから」とだけ相手にメールして、東京から一人で参加した移住ツアー。瀬戸の夕凪が終わった時、自身の長すぎた無風状態も変えられる気がした―(古民家再生ツアー)。アラフィフ世代の“変化の兆し”を描く上質な5編。著者初の小説、待望の文庫化!
著者等紹介
岸本葉子[キシモトヨウコ]
1961年神奈川県鎌倉市生まれ。エッセイスト。東京大学卒業後、保険会社勤務を経て、中国に留学。2003年、自らの闘病を綴った『がんから始まる』が大きな反響を呼ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kum
28
著者初の小説である『空き家再生ツアー』が改題加筆されたもの。それぞれに事情を抱えたり変化の岐路に立つ50歳前後の女性たち。胸に複雑な思いを抱えながらも大人の分別を持ち、互いの言葉や態度に本当の人となりや迷いを感じ取る。そのことの丁寧な描写に、そばにいる誰かの人生の厚みに触れたような気持ちになる場面がとても多かった。著者の岸本さんご自身が人の心遣いや感情に敏感な方なのだろうなと思う。大人同士の距離感と大人同士でしか交わせない心の交流を感じられる5編、どれもしみじみ良かった。2021/05/27
onasu
19
ar.50女子たちの人生の踊り場を描いた5編で、性別は違えど同年配としては興味のあるところ。 前半の3編は町田の陶芸教室に通う顔見知りという連作で、後半2編はそこからは離れるが代々木上原の居酒屋というもう一つの繋がりは続くというおもしろい形式。 ただ、その年代ならではの話しだが、こんなことがありました以上がないのは、年齢的な興味で手にした身には今ひとつ物足りない。 そして、ちょっと引っかかりがあり、読んだ本を探ってみると…。10年前なんで感想を読んでも一部しか思い出せないが、文庫改題の罠だ。2022/06/10
Sakura
18
シングル、アラフィフの女子が変化の兆しと対峙する、そんなふとした瞬間を描く5つの短編。今更営業研修を受けさせられる人見知りの佐知子。9年間の不倫を終わらせ、女友達と温泉旅行に行く治子。長年の介護生活から解放され、自分と向き合う頼子。お得意様の住む老人ホームまで品物を届けに行き、思わぬ状況に巻き込まれる朋子。古民家再生ツアーに参加した篤子。それなりに経験値もあり、分別のある、妙齢の女性が描かれたものは珍しいように思いました。ドラマティックな展開があるわけじゃないけれど、どれも前向きなラストでよかったです。2020/12/13
おれんじぺこ♪(16年生)
17
既読感は全くないけど「空き家再生ツアー」というタイトルの方で既読だった。なんだか身につまされるお話が多かった。登場する女性たちの年齢がまさにジャスト!だからか(笑)2022/10/04
なな
16
私より少し上の世代の女性たちを主人公にした短編集。表題作よりも、分別ざかり、多生の縁という2作品が良かったです。歳が近いせいか、共感できる部分が多々ありました。40代、まだまだ楽しんでいきたいです。エッセイストの初の小説ということでしたが、これから小説家としても期待してます。2020/03/06
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