出版社内容情報
ある朝目覚めた小説家の俺は、「昨日」の記憶がないことに気づく。どうやら俺は一日ごとに記憶がリセットされ、新しいことを覚えられないという症状を抱えているらしい。可愛い女の子と出会っても、小説を書き進めても、そのすべてを明日には忘れてしまう。絶望的な状況のなか、「負けるものか。諦めるものか。絶対に書くんだ」というメッセージとともに５万字を越える書きかけの小説が、パソコンの中には残されており――。第六回ネット小説大賞を受賞した「あきらめない」物語、待望の書籍化！
喜友名トト［キユナ トト］
著・文・その他
内容説明
「失ってしまう記憶の代わりに、最高の物語を残したい」小説家の岸本アキラは、ある朝目覚めると“昨日”の記憶がないことに気付く。実は彼は二年前の事故により、記憶が毎日リセットされてしまうのだ。そしてそんな困難な状況でも、アキラは小説を書き進めていた。絶望的な不安と闘い葛藤しながら、決して“明日”を諦めまいともがく感動ストーリー。
著者等紹介
喜友名トト［キユナトト］
２０１４年『悪の組織の求人広告』（ＫＡＤＯＫＡＷＡ）でデビュー。本作で第６回ネット小説大賞受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
191
2年前の交通事故で記憶が1日しか持たない若い小説家の話。毎日、記憶がリセットされちゃうとどうなるのかな。毎日、PCで「引き継ぎ」をしっかり見る真面目さ、仕事に対する集中力、ライダースジャケットを着続ける姿はこだわり、そんなアキラだからこそ、記憶がなくても小説家であり続けられたと思う。そして良き妹、良き友人達に巡られたのも幸いだったね。自分なら、もし記憶がないこんな環境なら諦めるな。アキラを通して、生きる楽しみ方を教えてもらった。ラストは痺れたというよりは、してやられたわ。思わずウルッとしてしまった。2020/12/18
ami＊15
55
途中まで主人公の話し方とかが苦手で「ちょっとこの話、好きになれないかな…」と思いながら読んでいました。だけど終盤のある展開からこの物語の良さが見えてきて、アキラは何故小説家として小説を書くのか？その理由にはとにかく心が震え、読後は「この物語を選んで良かった」と素直に思いました。もし自分が数年もの記憶を失ってしまったらきっと焦ってしまうと思う。毎日のように記憶が失われながらも自分の思いを小説にぶつけていくアキラの姿はとても印象強いものだったし、記憶を失うという境遇の彼にしか描けない世界観を存分に感じました。2018/09/22
kana
51
記憶障害をもつ主人公が困難を乗り越えて成長していく青春小説。文体はラノベ風、といったら語弊があるかもしれませんが、読みやすいものの軽くて気障なタッチ。キャラクターも定型的な要素が多分にあり、普通なら残念な印象になりかねないのですが、それらの印象をひっくり返すくらいプロットが美しい。綺麗な伏線回収で爽やかなエンディングを迎えたときに、キリンレモンのCMを見たときのような、AKB48の夏歌のPVを見たときのような、そうそうこの感じいいよね！とにっこりしたくなるような、うれしい気持ちになります。2019/09/02
ポチ
49
主人公と同じ状態になったら絶望してしまうかも知れない。周りに理解者がいるにしても、どうしようも無い歯痒さ、苦しさにも負けずに、諦めず前に進んでいく姿はとても輝いて見えた。2021/08/30
よっち
44
交通事故で一日ごとに記憶がリセットされ、新しいことを覚えられないという症状を抱えている小説家の岸本アキラ。そんな状況で不安と戦い葛藤しながら小説を書き進めるアキラの物語。毎朝自分が書いた引き継ぎを読みながら、試行錯誤して小説を書き続けるアキラとカフェで働く翼との出会い。サッパリした彼女とのやりとりが刺激になり書き上げていく小説に込められていった思い。まさかの急展開にはもどかしくなりましたけど、それでも諦めなかったアキラの挑戦と、失われていた間の出来事が次第に明らかになってゆく結末はとても良かったですね。 2018/10/23
