出版社内容情報
田丸雅智[タマル マサトモ]
著・文・その他
内容説明
初老のマスターが営むその小さなバーには、酒の種類がひとつしかないという。出されたグラスの美しさに驚いていると、マスターは酒の名前を告げた。口に含んだとたん、目の前に海の景色が広がって―。(「海酒」)不思議なのに懐かしさを感じさせる、新世代ショートショートの傑作集。一話5分で楽しめる、夢と驚きに満ちた世界がここに!
著者等紹介
田丸雅智[タマルマサトモ]
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。15年からは自らが発起人となり立ちあがった「ショートショート大賞」において審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、新世代ショートショートの旗手として幅広く活動している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
109
現代ショートショート界の第一人者(たぶん)である田丸さんの作品集。星新一のショートショートはモノクロの鋭さを感じるのだけれど、田丸さんのショートショートは淡色もしくは暖色の温かさを感じる。こんなに短いのにホントショートショートって個性が出る。オチのキレよりも余韻系が多い印象だが、ちょっとしたアイデアを物語に展開する発想力が見事だと思う。すらすら読めるので、もう何作か読んでみたい。2019/03/13
Tetchy
101
全20編中のベストを挙げると、「ふぐの恩返し」、「蜜」もいいが、「年波」をベストに挙げたい。どこか特別な余韻を私に残した。着想は前作に比べてかなり上がったと感じた。意外なオチやクスリとする一行が多くなったからだ。あとは文章。恐らくは作者が書きやすいからという理由で一人称叙述を採用しているのだろうが、三人称にすることで傑作になり得た作品もあっただけに実に勿体ない。逆に云えばそれぞれのアイデアに適った叙述を選べば傑作が生まれる可能性があるということだ。次作からは三人称叙述の作品が増えることを期待したい。2018/04/20
ばう
57
★★★ 優しい話、悲しい話、しあわせな話、怖い話。色んなショートショートに夢の世界を見せていただきました。『ふぐの恩返し』『月工場』好き。『蜜』怖い。『年波』面白い発想。『O型免許』オチがいい。『壁画の人々』好奇心は猫をも殺す。『修正駅』自分の運命は見たい様な見たくない様な。『似豆』は悲しいな。『ジンベエノット』仕事のストレスからいっとき解放されそうだけど、仕事の邪魔にならないのかしら?『海酒』一番好きかも。2020/08/26
itoko♪
57
単行本の装丁がすごく好みで印象に残っていて、文庫化してすぐに購入したものの積んでいました。ショートショートなので、通勤や通学時など移動の合間にさらりと読めていいですね。どこか懐かしく、不思議な、そして奇妙な世界観が広がっていて、瑞々しい描写。美しい情景が目に浮かぶような「桜」、ゾクッとさせられた「蜜」、ラストのオチが効いている「ふぐの恩返し」が良かったです。2018/08/09
しの
31
田丸雅智さんの思いが詰まったショートショート小説は、今回もとても面白かったです。 個人的にオススメなのは、蜂蜜です。 あらすじは、人の不幸から漏れた蜂蜜ができるまでの話てす。 一言でストーリーをお話しすると人の不幸は蜜の味ということわざがじっくり当てはまります。 どんなことでも、度が過ぎると良くないなと思わせてくれる作品です。2020/08/19